副社長は今日も庇護欲全開です
本当にそうなら嬉しいけれど。すると住川さんは、笑みを崩さずに言った。

「かなり、希望的観測も含まれていますが」

「え……?」

それは、どういう意味だろう。住川さんは、聞き返した私にそれ以上話すことはせず、ドアを開けてくれた。

挨拶をし副社長室を後にした私は、心にモヤモヤを感じる。落ち着かない──そんな気持ち。

住川さんの言葉が引っかかるし、なにより副社長の話が気になっていた。

改めて休日に話したい内容って、なんだろう……。

◇ ◇ ◇

副社長と過ごす二回目の土曜日。今日も空は澄み渡り、爽やかな風が吹いている。

副社長との約束の時間、十一時前にはマンションの玄関前で待っていると、ほどなくして彼の車がやってきた。

「おはよう、下村さん。待たせて、すまないな」

運転席から降りてきた副社長に、私は慌てて両手を顔の前で振る。

「そんなことないです。それに副社長は、五分早く来てくださいました」

私が落ち着かなくて、早めに外へ出ていたのだから、副社長に謝ってもらうのは申し訳ない。

今日の彼との約束が待ち遠しくもあり、部屋でじっとしていられなかっただけなのだから。

ただ、話がなにかが分からないから、それは不安でもあるけれど……。

「今日は、きみとゆっくり話せる場所に行きたいと思っていてね。さあ、乗って」

副社長に促され助手席に乗ると、車は軽快に走っていった。
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