副社長は今日も庇護欲全開です
「どこに行かれるんですか?」

先週行ったシーフード料理の店を通り過ぎ、海岸沿いを走っていく。

話がなにかも分からなくて、緊張しながら聞いてみた。

「この先にある店だよ。プライベートビーチを持っている地中海風レストラン」

「地中海風レストランですか?」

そんなお店があったんだ……。しかも、プライベートビーチを持っているなんて、驚いてしまう。

私のマンションから車で五十分ほどで、副社長の言うお店に着いた。

車中では、当たり障りのない会話ばかりで、彼とはどこかぎこちない。

こうやって一緒にいられることが、私は嬉しく感じているけれど、副社長は違うのかな……。

その答えは、副社長の“話”で分かるのかもしれないけれど。

「素敵なお店ですね……」

海を見下ろせる場所にあるレストランは、それほど大きな建物ではなく、隠れ家的な雰囲気だった。

南プロヴァンス風の造りで、ホワイトの塗り壁に、オレンジ色の屋根がオシャレ……。

思わずため息を漏らした私に、副社長は笑みを見せた。

「気に入ってくれた? 完全予約制でね。今日は天気がいいから、ビーチ側の席を取ってもらってるんだ」
< 64 / 123 >

この作品をシェア

pagetop