副社長は今日も庇護欲全開です
「そうなのか……。じゃあ、夏になったら海に行こう」

「は、はい」

呆れられていなければいいけど……。海のデートが未経験とか、言わなければよかったかな。

恐る恐る彼を見ると、視線が合って胸が高鳴る。真っすぐ見つめられて、副社長から目をそらせなかった。

「きみの思い出が、これからは俺で溢れてほしいと思う」

「副社長……」

どうしよう……。ドキドキが止まらない。彼の手がそっと私の頬に触れ、鼓動はさらに高鳴った。

「副社長じゃない。二人きりのときは、直哉と呼んでほしい」

そう言う彼は、ゆっくりと私に顔を近づける。キスをされる……。そう直感した私は、自然と目を閉じた。

「直哉さん……」

呟くように名前を呼ぶと、温かい唇が重なった……。

触れるだけのライトなキスでも、私の胸は痛いくらいに鼓動が速くなっている。

そろそろ、唇を離してもいいかな……。そう思っていたとき、彼に強く抱きしめられた。
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