副社長は今日も庇護欲全開です
直哉さんは車のキーを持ち、私の側へ駆け寄ってきた。

「いえ、大丈夫です。駅はすぐ目の前ですし、毎回送り迎えは……」

さすがに、申し訳なさすぎて、そこは丁重にお断りするつもりでいる。だけど彼は、予想どおり首を横に振った。

「だが、まだ時間も早いだろう?」

「だからですよ。一人で大丈夫ですし、直哉さんは日頃お忙しいんですから、ゆっくりされてください」

本当は、まだ一緒にいたいから、彼からの申し出はとても嬉しい。

だけど、彼に甘えてばかりもいられないから、今日は絶対にお断りしよう。

「いや、しかし……」

それでも納得してくれない直哉さんに、私は小さく微笑む。

「毎回、送り迎えをされたら、直哉さんに会いづらくなります。今日はまだ明るい時間ですし、心配しないでください」

説得をすると、彼はなんとか分かってくれたようで、ため息をつきながらも微笑んでくれた。

「分かった。きみに気を遣わせていたようで、すまないな。じゃあ、せめてこれは受け取ってくれないか?」
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