副社長は今日も庇護欲全開です
そう言って直哉さんが差し出したものは、カードキーだった。綺麗に磨かれているシルバーのキーを静かに受け取り、まじまじと見つめる。

「これって、まさか直哉さんのお部屋の鍵ですか?」

「そうだよ。たしかに、きみの家は少し遠いんだ。だからたまには、ここへ泊まりに来ないか?」

彼はそう言い、私の腰に手を回すと自分のほうへ引き寄せた。

まるで抱きしめられているようで、一気に胸が高鳴ってくる。

「ありがとうございます……。本当に、鍵をもらっちゃっていいんですか?」

「構わないよ。それより、本当はもう少し一緒にいたかった。だけど、今回はきみの気持ちを尊重する」

「直哉さん……。もしかしたら、明日も会社で顔を合わせることは、あるかもしれませんし」

ドキドキする。彼の顔が近くにあり、さらにときめきが増してきた。

「そうだな……。なあ、陽菜。俺たちが付き合っていることは、しばらく内緒にしていてくれないか?」

「内緒ですか……? はい、分かりました」

そうよね、さすがに自社の副社長と付き合っているなんて、簡単に話せることではないか……。

付き合い始めたばかりだし、私もそれでいいと思う。納得して頷くと、彼は微笑んでさらに私を引き寄せた。
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