副社長は今日も庇護欲全開です
彼の溺愛が凄いです
日曜日の電車も混んでいて、席には座れそうにない。普段は、通勤のビジネスマンたちで混み合う車内も、休日はカップルやファミリー、友人同士のグループでいっぱいだった。

だけど私は、席に座れないことも、混雑している電車も気にならなくて、心は早く直哉さんに会いたい、そればかり。

「もうすぐかな……」

あと数分で、駅に到着だ。ロータリーまで迎えに来てくれると、直哉さんは言っていたっけ。

お泊り用の着替えや化粧品を入れたスポーツバッグを肩に掛け、電車がホームに到着すると足早に改札へ向かった。

ちょうど、お昼。どこかへ食事に行くかな? それとも、お部屋でまったりとか?

とにかく、どっちでもいい。直哉さんと、一緒に過ごせるのなら……。

「陽菜」

改札を抜けロータリーを出たところで、直哉さんに声をかけられた。

「直哉さん!」

嬉しくて思わず声が弾み、その直後辺りを見回す。人通りの多い駅前だから、会社の人に見られるかもしれない。

「大丈夫だよ。そんなに警戒をしなくても」

直哉さんは静かにそう言って、私からスポーツバッグを取った。

さりげなく荷物を持ってくれ、その優しさに胸はときめく。

「でも、もし誰かに見られたら……」

二人で歩きながら、すぐ近くに停車してある彼の車に乗り込んだ。

すると、直哉さんは運転席でシートベルトを締めながら、私に穏やかな表情を向けた。

「そうだな。もし、そうなったら……。正直に話してしまおうか?」
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