泣き跡に一輪の花Ⅱ~Victim or Notice~。
「……楽しくねぇ。そうなるのは、お前が自分を大切にできない限りは無理だろうな」
「……なんで」
「そりゃあ、それが仲良くなれない原因だからだよ。空我、母親がお前を心配する理由、なんだと思う?」
「……虐待してたの気にしてんだろ」
「もちろんそれもあるだろうけど、多分一番の理由は、お前が見てて嫌になるくらい自分のことを大切にしないからだよ」
俺は何も言わず、潤を見つめた。
「……お前がそんなんだから、母親は気にすんの。ただでさえ身体が細くて胃も弱いのにとことん自分を蔑ろにするからほっとけないんだよ」
「……心配しろなんて頼んでない」
「確かにな。俺も、お前の母親に心配する資格はないと思う。……でも、そういう問題じゃないんだよ。親は子を心配するもんなんだよ」
「……今更心配されても困る」
「それはそうかもな。でも俺も空我が心配だから、母親のためじゃなくてさ、俺のために自分を大切にしてくれないか」
俺は思わず眉間に皺を寄せた。
「……潤のため?」
「ああ。でもまぁ自分を大切にしろって言われてすぐにそうできたら苦労しないだろ? だから、考え方をちょっと変えてくれないか?」
「……考え方を変える?」
「ああ。俺はお前が死んだら悲しい。たぶん俺はお前が死んだら、お前を追って自殺する。だから俺が死なないために生きてくれ」
「な、何馬鹿げたこと言ってんだよ!」
俺は思わず声を荒らげて叫んだ。
「……馬鹿げてんのはお前だよ。それぐらい思われてるのを自覚しないお前が変なの。
俺はお前が死んだら本当に自殺する。そういうことをするくらいお前が大事なんだよ。純恋も恵美もそう。俺みたいに自殺するかはわかんないけど、あいつらはお前が死んだら少なくともボロ泣きすると思う」