泣き跡に一輪の花Ⅱ~Victim or Notice~。
「おぎゃああああ」
「ぎゃあああ」
耳をつんざくような赤ん坊の鳴き声が2つ、轟いた。
「おめでとうございます! 元気な男の子と、女の子ですよ」
病室のベッドにいるめぐが医者の声を聞いて、安心したように笑った。
今、たしかに奈々絵の子供がめぐの体から生まれた。
この長谷川総合病院の672号室で。
ここが、奈々絵が生きて死んだ世界だ。
きっと、そんなことは俺達しか知らない。
虹蘭のヤツらと、奈々絵の親戚だけが
奈々絵がここで確かに生きていたことを知っている。
それでいい。
あいつのことを、俺たちは一生忘れない。
忘れない、
忘れてたまるもんか。
…………だって、親友なのだから。