泣き跡に一輪の花Ⅱ~Victim or Notice~。
女みたいな名前のせいでいじめられた奈々絵は、小さい時から人一倍無愛想で、笑うことが少なく、いつも不機嫌だった。
対して、姉の紫苑は人当たりが良く、誰にでもしたわれたよくできた姉だった。
女なのに奈々絵をいじめた奴を説教してくれたりもした。絵に書いたような理想の姉だったんだ。
要は、なんで姉より弟のお前の方が出来が悪いのに生きてるんだと。そういうことだ。
慕われているのに弟より頭が悪い姉と、誰からも好かれないくせに、姉より頭が良い弟。
2人は、悪い意味で何もかも正反対だったのだ。
“お前が死ねばよかったんだ”
“なんであいつが生きているんだ”
“お前が死んだらどんなに平和だったか”
奈々絵は、親戚の奴らに何度そのような言葉を掛けられたのだろうか。
そんなことを思っている奴らが、奈々絵の葬式に来てくれるはずもなかった。