泣き跡に一輪の花Ⅱ~Victim or Notice~。
「……そりゃ、隠したくもなりますよ。こんな体。大っ嫌いですし」
投げやりに言う。
「……すまなかったね、何もしてあげられなくて」
「いや、頼らなかったのは俺ですから。もう虐待されてませんし」
頭から手を離し、俺は首を震った。
「そうか。両親はどう? 今は本当に何も無い?」
「……何も無いですよ。母さんは毎日飯も弁当も作ってくれますし、父さんも優しいので」
それは事実だった。俺はもう、本当に虐待をされていない。
地獄だった日常は、あっさり無くなった。親友の命という、あまりに重すぎるものを代償にして。
「……そうか。両親と進路の話は「逆に、俺がそれ普通にできると思います?」
自嘲気味に、俺は言った。
「……別に、親が嫌いとかじゃないんです。むしろ好きですよ。そりゃあ虐待はされましたけど、育ててくれたことには感謝してますし。
ただ、頼れって今更言われても、無理なんです。
頼ろうと思っても、頼ったら殴られるんじゃないかとか、怒られるんじゃないかとか。
嫌な想像ばっか頭によぎって、ひどい時は話すだけで物吐いたり、過呼吸になったりするんです。
……そんなんで、相談できるわけないじゃないですか」