泣き跡に一輪の花Ⅱ~Victim or Notice~。
リビングに案内された俺は、ソファに座った。
「ほら」
俺にココアを差し出して、潤は笑う。
「……ありがとう」
「ん。今日はどうした?」
俺の隣に座って、珈琲を飲みながら潤は言う。
「……センコーが、医者になる気はねぇのって聞いてきた」
「……そりゃあ、ずいぶん不躾な質問だな」
顔をしかめて、潤は言う。
「母親はなんていってんの?」
「継がなくていいって。父さんは継いだら喜ぶと思うけど、好きにしていいって」
「まぁそうだよな。継げっていってたら俺が怒るわ。ぶっちゃけ虐待した親の仕事なんて継ぐ価値もねぇからな」
吐き捨てるように潤は言う。
「……それは、そうだけど」
「空我、やりたいこととかねぇの?」
「……わかんね。 潤は?」
「俺は親の仕事継ぐ話になってるからな。まぁでも、継ぐにしても継がないにしても、大学はいいとこ行くつもりだよ。その方が将来困んなそうだし」
俺は潤の服の袖を掴んだ。
「空我? どした?」
「……潤と同じとこ行きたい」