泣き跡に一輪の花Ⅱ~Victim or Notice~。
珈琲を目の前のテーブルに置いてから、目を丸くして潤は俺を見た。
「……だって、潤いねぇとつまんねぇもん」
「へぇ?じゃあ勉強頑張んないとなー」
そういい、潤は俺の手からココアを奪ってテーブルに置くと、俺を勢いよく抱きしめた。
「ちょっ、潤いてぇ」
虐待の痣がいたんで、俺は思わず顔をしかめた。
「……空我」
俺の体から手を離すと、突然、低い声で潤は言う。
「なっ、なんだよ」
「見ていい?」
潤が俺のYシャツの第二ボタンを掴んだ。
虐待の傷を見ようとしてるみたいだ。
「はっ?嫌だよ」
「引かねぇから、いいじゃん」
「やっ、嫌だ……」
涙が流れた。
「悪い。泣くと思ってなかった」
慌てて潤は手を離した。
「いいよ。潤は悪くない。俺が弱いだけ。……風呂入ったり、着替えたりする度に心底気持ち悪いって思っちゃうからさ。お前にも見せらんないくらい」
傷を見る度に生きてるのが嫌になる。死にたくなる。
自分の身体の全てが気持ち悪い。気味が悪い。どうしようもなく。