泣き跡に一輪の花Ⅱ~Victim or Notice~。
バイクから降りた後、親子を見て立ち止まってしまった俺を、潤は何も言わず腰に背中を回して抱きしめた。
「……空我、大丈夫だから。
もう怯えなくていいから……今日は楽しもうぜ?」
なんでこいつは、俺が必要とする言葉が分かってしまうのか。
「め、潤、俺は……っ!」
ぎゅうっと胸が締め付けられて、俺は声もろくに出せなかった。どうしようもなくて、無性に涙が溢れ出す。
……もっと、何もかも楽しめたらよかったのに。
本当は、ここにちゃんと5人で来たかった。
そしたらきっと、奈々絵が作り笑いをして、何泣いてんだよバーカとか俺に向かっていうんだよ。んでもってめぐは、そんな俺にいつもみたいに呆れるのかな。
『あづ!!』
奈々絵の声が頭によぎった。
奪われた日常も、夢見た日常も、
もう二度と訪れやしない。
「うっ、ああああっ、嗚呼ぁぁ!」
俺は嗚咽を漏らし、
馬鹿みたいに泣きじゃくった。
潤は涙が止まるまで俺を抱きしめ続け、
背中を片手でそっと撫でてくれた。
……あったかい。
このお節介な温もりに、何度救われたか俺は分からない。