泣き跡に一輪の花Ⅱ~Victim or Notice~。




『……えっと、聞こえてる?







このDVDが再生されているってことは、もう俺はこの世にいないんだと思う。……ごめんな、勝手にいなくなって』





「「「奈々絵っ!!!」」」




俺と潤とめぐの3人がテレビに写った病衣をまとう痩せぎすの奈々絵をみて張り上げた声は、もはや悲鳴に近かった。




そこにはずっと会いたかった奴がいた。





画面越しで、触れて話ができないのがもどかしい。




昼頃なのか、映し出された672号室の奈々絵の病室は明るくて、奈々絵はベットに頬杖をついて座っていた。




恐らく、奈々絵が死ぬまで1週間もない時に撮った映像。




『……空我、誕生日おめでとう。俺だけ祝わないのもなぁって思ったから、このDVDも、他にも手の込んだことしたけど、……本当に柄じゃないわ』








照れたように頬を微かに赤くしていう奈々絵が愛しかった。





あの映像の中に入れたらいいのに……。



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