泣き跡に一輪の花Ⅱ~Victim or Notice~。
「彼女はね、奈々絵くんにそれはそれはご熱心だった。
不器用で頭が良くて愛想の悪い男の子なんて、同級生でも上級生でもみんなどこか嫌いがちだろう?
だから、奈々絵くんが学校をつまらないと思っても、登下校や家の中。つまり、姉の自分といる時だけは、楽しいと思ってくれるように。そのためだけに彼女は必死だった。
…………最期には奈々絵くんを庇って、命を落としてしまうほどにね」
なんて声をかければいいのか、全然わからなかった。
時間が止まったみたいに、重い重い沈黙と張り詰めた空気だけが流れていた。
無意識の内に、片目から涙がこぼれ落ちた。