泣き跡に一輪の花Ⅱ~Victim or Notice~。
初めてだった。
奈々絵に、そんな風に弱音を吐かれたのは。
「……価値がないなんて、いうな。それじゃあ、何のために俺がお前の自殺を止めたのか、わからないだろ……っ」
苦虫を噛み潰したような顔をした俺の瞳からは、いつの間にか涙が零れていた。
「だったら教えてくれよっ!!」
直後、奈々絵は俺の肩に手をやり、体をものすごい勢いで押し倒した。
頭と体がベランダの床に触れた直後、何か水のようなものが俺の頬に零れ落ちた。
奈々絵の涙だ。
「俺はっ、あの世話焼きのバカ姉に、謝罪どころか感謝の一つも言えなかった!!登下校は2人でしてた癖に、家にいた時だってお風呂の時以外は大抵一緒にいた癖に、俺はあのお節介野郎に、感謝の一つも……っ。
俺はあの姉に、何も返せなかったクソッタレなんだよっ!!!
……それなのになんで。なんで姉ちゃんはそんな奴を庇ったんだよ……。
なぁ、あづ。頼むから教えてくれよ……」
涙を流しながら、奈々絵はいった。
俺には一緒になって、涙を流すことしか出来なかった。