泣き跡に一輪の花Ⅱ~Victim or Notice~。
「………なんでお前が泣くんだよ」
奈々絵はそう言い、悲しそうに笑った。
「奈々、無理すんな。泣きたいなら泣いとけば? ……俺にしかどうせバレねぇから」
奈々絵の涙を拭い、俺は笑いかけた。
「うおっ!?」
直後、奈々絵は倒れるように俺の胸に顔を押し付けた。
「……何も言わなくていいから。
ただ、……しばらく、このままでいさせて」
寝巻に、奈々絵の両腕の爪がくい込んだ。
奈々絵はその日、俺の胸に顔を押し付けて、夜が開けるまで無言で涙を流した。