1番近くて1番遠い。
-出会い-

『…み…美雨会いたい…』

「誰……?」

16歳の朝私は誰かに呼ばれたように起きた。
頬には涙が流れていた。

「なんで私泣いてるの…?
あの声どこかで…優しくて懐かしい声…誰なんだろう…。」

ふと時計に目をやるの遅刻ギリギリの時間

「やっば!!遅刻しちゃう!」

私はその時その夢の意味を深く知ろうとせずに家を出た。

「七瀬!遅刻だぞ!!何回目だと思ってるんだ!」
先生の怒鳴る声が廊下に響き渡る。

「すいません…」

「そんな反省してるなら、プリント整理手伝うよな??」

「……はい?」

放課後、私は見た事無いような量のプリントを机の上に置かれ
「これ、全部ホッチキス留めしたから、帰っていいぞ〜頼んだぞ〜」

「本物の鬼じゃん…」

「なんか言ったか〜??」

その時の先生の無理やり笑った顔が今でも思い出すとゾッとする。

「あぁー!もう!!変な夢みるからじゃん…最悪…」

(♪〜)
黙々と作業していると、何か曲が流れていることに気づいた。

「うそ…」
自分でも耳を疑った。
その歌声は、あまりにも今日見た夢の声に似ていたから。

私は走って、音の鳴っている方へ走って行った。

すると非常階段で友達が曲を聴いていた。

「ねぇ!!誰の曲?!」

「美雨か!もう!びっくりするじゃん…」
「えっとねーこの頃デビューしたんだけど
ね、B1A4ってグループなんだ〜!美雨も聴いて見なよ〜!って美雨??!!!」

私は何故だかわからないけど、その場に泣き崩れた。すごく会いたかった人に会えたような感覚だった。





「でさ〜その時の先生にこの前会ってもう、結構おじいちゃんになっててびっくりしちゃった!!」

懐かしい一年ぶりぐらいの高校生の時の同級生からの電話だった。

「うそ〜!あれから5年?もうそりゃうちらも21だもんね〜全然日本帰れてないからそろそろ帰りたいな…」

「帰ってきなよ!美雨帰ってきたら絶対みんな喜ぶって!!」

「本当〜?帰る予定立てようかな…あ、ごめん会社から電話だから切るね!また連絡するね!」

七瀬美雨21歳、私は今韓国に住んで、テレビ局に就職してる。

「はい、七瀬です。」

「ほんとごめんね急なんだけど、僕の知り合いの事務所がさ、日本人スタッフをずっと探してるみたいなんだけど君通訳とかできる?」

「普通の会話の通訳程度ならできます!」

そして今に至る。
こんなの聞いてない。

私の目の前には建っている事務所は、ずっと憧れていたB1A4の事務所だったら。

「うそでしょ…渡された地図的には合ってるけど…」

私は、事務所の前で立ち尽くしているとテレビ局の専務から連絡が来た。

「そろそろ事務所ついた頃じゃ無い?」

「えぇ…まぁ、でもこれなんか間違えてません?アイドル事務所って聞いてませんでしたし…。」

「ごめんごめんちゃんと説明してなかったね。まぁ、とりあえず、中に入って〜話は付けてるから〜」

一方的に電話が切れた。
(こんなザツい人初めてだわ…

まぁ、話がついてるというならとりあえず入ってみようと思い事務所のドアに手を伸ばすと、扉が開いた。

「え……?」

『……?』

『すいません。事務所に用事ですか?』

私は思考停止。
目の前に憧れの人が立っている。
B1A4の事務所だし、メンバーがいるのは当たり前だけど…

「え!!?あ、その!はい!!あの!!今日からこちらで働かしていただく事になりました七瀬です!」

もうパニック状態。

『……あはははは!!』
『話は聞いてますよ!初めてですよ、事務所の前で自己紹介してくれる人なんて面白い人だ』

(恥ずかしくてもう帰りたい…

『今、メンバーしかいないのですが社長が帰ってくるまで中で待ってて下さい。』

ソファーに腰掛けると、温かい飲み物を出してくれた。

(改めて見るとカッコいいな…

『そうだ、それじゃ、社長が帰ってくるまで自己紹介しますね。』

『僕は、B1A4のリーダージニョンです。何か分からない事があったら聞いてください!』

『僕は、シヌゥです。ヨロシクね。』

『僕は、サンドゥル!へへへっ』

『僕は、ゴンチャンです。ヨロシクお願いします!』

「あれ?バロさんは今日はいないんですか…?」

そう言うと、ジニョンとシヌゥの顔が一瞬固まったのが分かった。

(あれ…この空気もしかして聞いたらいけなかったのかな…どうしよう…)

そうすると私に聞こえないように小さい声で、サンドゥルがジニョンに
『もしかしてあの子じゃ無いよね?』
と言っているのが聞こえてしまった。

(え??私なんかしたっけ…)

そうするとすかさず、シヌゥが笑顔で
『あれ?僕たちの事、もしかして知ってるんですか?』

(ここは本当のこと言うべきだよね…
「あ…実はずっとデビューした頃からファンなんです…」

ジニョンさんは
『…本当ですか!!嬉しいな!!』
と笑顔で言ってくれたが、その影で、ゴンチャンとサンドゥルが驚きを隠せない表情をしているのがすぐに分かった。

「はぁ……」

ベットの上で大きなため息をついた。

あれから事務所でごく普通に働いてるし、やりがいのある仕事も多く充実していて楽しいが、メンバーがどうしても気にかかる…

まともに話してくれるのはジニョンさんしかいないし、他のメンバーどこか避けられてる気さえした。

「結局、今日もバロに会えなかったな…って、仕事なんだし何言ってんの…」
「とりあえず寝よう…」

私は眠りについた。


『美雨…美雨……ねぇ』

「誰なの…?行かないで、ねぇ!……バロでしょ?」

『………愛してる。』

「ねぇ…お願い…声だけじゃやだよ…会いたい。」

まただ…あの日以来、夢に出てこなかった優しくて懐かしい声。
あの時は誰だか分からなかった。

けど、今なら分かる。絶対にあの人だ。バロに違いない。
どうしても今会わなきゃもう会えない気がして、私は家を飛び出して雪の中事務所に向かった。

事務所につき、灯りがついていることに気づく。

「もしかして…」

淡い期待を寄せながら事務所の中に入ると、他のジニョンが探し物をしていただけだった。

『どうかしたの?こんな遅くに…』

「あぁ、すいません!事務所の近く通ったら灯りがついてたので心配になって…」

『そう…外寒いから送って行こうか??』

「大丈夫ですよ!ありがとうございます!」
そう言ってジニョンに背中を向けた瞬間、涙が溢れてきた。

「はは…そんな上手くいく訳ないじゃん…バカだな私…会ったとしても絶対覚えてないだろうし…何がしたいんだろう」

自分が嫌になった。ファンだった頃の自分を捨てて楽になりたかった。
自分がどんなにバカなことをしてるのか…惨めでバカバカしくて事務所を出て雪の中で1人泣いた。




『………美雨?』

あぁ、夢で聞いた声だ。
どれほど会いたかったか。

『美雨だろ……。』

私には後ろを振り向く勇気がなかった。
けど、優しく掴まれた手を振りほどく勇気もなかった。
そして力強く引き寄せられ、荒々しくも優しくもあるキスをされた。

この時、このキスを拒んでいればどれだけバロを傷つけずにいられたか、私は気づいていなかった。

「ソンウおっぱ…」

『会いたかった。本当に探してた。どこを探してもいかなったのにこんなに近くで会えるなんて…』

強く抱きしめられ顔は見えなかったけど泣いているのが伝わってきた。

「ごめんね…本当に急に居なくなってごめん…」

そう、私たちは3年前ファンとアイドルとこの一線を超えて居た。
けど、私は逃げた。大切な人を失うのが怖くて、バロにこれ以上危ない目に合わさないため。自分の心に嘘をつき逃げてしまった。

それでも、バロは優しく私を包み込み、何度もキスをくれた。

この瞬間が永遠に続けばいいとその時の願った。けど、今は沢山のファンがいるスター。

会ったら1番に言おうと決めて居たこと。



「わたしね今。愛してる人が居るの。」
「だから、全て忘れて?私はもうあなたを忘れる。」

これが私の精一杯の嘘。

『…うそだろ?…そんなの無理だよ。せっかく会えたのに。』


泣くつもりなんて無かったのに、次々と涙が溢れてくる。

「嘘なんかじゃないよ??本当に愛してる人がいるの。」


『………誰なの。』



『悪いなソンウ。』

そう言うと、誰かがわたしの腕を強く引き寄せ優しくて強引なキスをした。

何が起こったか理解できなかった。
頭の中が真っ白になるのが分かった。

「…ジニョンさん?!」

私の口に指を当て耳元でジニョンが
『しーーっ僕に任して?ね?』

バロは怒りと動揺を隠せない顔で
『ヒョン。どう言うことか、説明してください。』

ジニョンは、余裕ぶってバロに笑いかけながら
『うーん…こう言うこと。』

そう一言言うと。
私の肩を抱いて、車に乗り込んだ。

本当に何も言葉が出なかった。
走り続ける車の中で、ジニョンさんは、ただひたすら泣きじゃくる私を慰めてくれた。

かなり車を走らせたと思う。
いつのまにか、海辺まで来ていた。
海辺に車を止めて、少し歩こうかと。

ジニョンが歩きながら、
『嫌なことがあったら、ここにいつも来るんだよね。海が全部嫌なことが流してくれそうじゃない?』

「ジニョンさんみたいですね…」

『僕みたい?』

「海ってたまに大きすぎて、怖くなります。何かを失うんじゃないかって」

『やっぱ面白いね。美雨ちゃんって』

静かに笑うジニョンの横顔がどこか寂しく感じた。




「すいません。家まで送ってもらっちゃって…。」

『女の子を雪の降る夜道を1人歩かす方がどうかしてるよ』

「女の子扱い久しぶりですよ!あははっ」
「それと…あの時はかばって頂きありがとうございました。」


『好きでもない子にキスは出来ないでしょ?』

「…え?」

『…本心だから。あのキス。
じゃあ、おやすみ』

ジニョンの耳が赤くなるのが分かった。
すぐに扉を閉めて、車は行ってしまった。

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