君ともう一度 あの春を迎えよう

葉月の事は頭から少し消し去って、

手元の本に目を落とした。

やっとゆっくり本を読める。

そう一息つきながら、

ページをめくった。

途端

ガララララーッ！！

勢いよく開いたドア。

クラス中の視線が
その開いたドア…

というより、

ドアを開けた人物に集中した。

勿論俺も、

突然の騒音に驚いたのと

やっと落ち着けた心にまた邪魔が入ったのとで

みんなと同じ方を見た。

というか、多少睨んだ。

俺を含む、ほぼ全員の視線の先にいたのは、

クラスの女子、山中 恋加。

確か、葉月の幼馴染…
だった気がする。

葉月の話を聞き流していたから、

よく分からないけど。

そして、その山中が叫んだ。

「みんな大ニュース！！
今日うちのクラスに転入生がくるって！！
しかも、超絶美少女らしいよ！！」

相当興奮しているのか、

彼女の顔は、少し赤みがかっている。

興奮と、
大ニュースと、
大迷惑な大騒音を連れて駆け込んだ彼女。

俺は、これから起きるクラスのお祭り騒ぎを想像してしまい、

思わず顔を歪めた。



まあ、その予想は、

当然当たってしまい、

「えっ？！
恋加マジ？！」

「マジだよ！」

「ヤバっ・・・！」

「なあ聞いた？
美少女だってよ？」

「恋加ナイス！！」

耳を裂くような声。

ここは、窓際の一番後ろ。

俺の席は、一番静かな筈なのに。

せっかく隣が空席なのに。

ここはカラオケでも、

ましてや工場でもないというのに。

これじゃあ、一人一人が騒音発生器だ。

・・・ああ、これだから

大勢の人が集まるのは嫌なんだ。

集団行動がつくづく向いていない俺に、
学校なんて、

ただの苦痛でしかない。

本に集中出来ない。


うるさい。


そんなに 騒ぐことか？

山中だって、叫ぶ必要なかっただろ？

本当 頭の悪い奴ら…。

静かに過ごしたい人だっているのに、

そんな事も分からないのかよ。

心の中で、ぶつぶつ文句を言った。

段々イライラしてきた。

そして、気づいたら、

「ちっ・・・。
煩いな。」

そう呟いていた。