君ともう一度 あの春を迎えよう
『ちっ・・・。
煩いな。』
普段なら風の囁きのように、
みんなの耳を通り過ぎるはずの、
俺の呟き。
なのに、
なんだこの状況。
俺の舌打ち、もとい呟きから数瞬。
騒がしかった教室は静まり返り、
さっきまで山中に向いていた視線は、
俺の方に集中している。
やばい。
そう思った時にはもう遅い。
みんなは、
怪奇現象でも見たかのような表情で、
俺の事を凝視している。
失敗した。
こんな事言ったら、目立ってしまうのに。
極力地味でいようと思っていたのに。
ひっそり生きようと思っていたのに。
まあでも、もう手遅れだ。
みんなが驚くのも無理はない。
なにせ、出席をとる時か、
授業中に当てられた時くらいしか
喋らない奴が、突然舌打ちして、
更に「 煩いな」 だからな。
と、一人で納得していると、
名前は出てこないけれど、
クラスメイトの女子が話しかけてきた。
「今のって…、
佐倉、君・・・?」
それはもう、
目が飛び出るんじゃないかと心配になる程、
目を見開いて。
はあ・・・。
今更はぐらかしたところでな・・・。
仕方ない。
もう、開き直ろう。
「うん。」
と、俺が返事をすると、
「えっ・・・。
ほん、と・・・?」
「うん。」
「舌打ち、したのも・・・?」
「だから、そうだって言ってるだろ。
いい加減しつこい。」
「・・・っ?!」
いや、そこまで絶句しなくても良くないか。
何気に失礼だから。
と、心の中で突っ込んでいると、
またもや名前が分からない男子が笑い出した。
「ぶはははっ!!
マジかよ!
佐倉って案外毒舌?!
新発見!!」
「あっそう。」
「ふはっ!
ひっでぇ!
あ、でもさぁ、
佐倉って、特定の奴とは喋ってるよな?」
「そうかな。」
そんなことはないけどな・・・。
一応返事をした。
その時、耳に飛び込んできたのは、
「えっ・・・?
あたし、佐倉君の声、
ちゃんと聞くのはじめてかも・・・。」
という、誰かの呟き。
確かに〜、なんて同意の声も。
は?
俺は無性に腹が立ち、
億劫だった筈の会話を、
自分からし始めていた。
「確かに、俺はみんなと喋るの極力避けてるし、
偉そうには言えない。」
俺のトーンを落とした声に、
教室内がまた静まる。
「けどさ、
俺の声、初めて聞いたとか言ってるけど、
それはさ、みんなが人の声に耳を傾けないからじゃない?
そんな風に言われると、気分悪い。
君らが普段騒がしくして、
迷惑だと思ってる人もいるのに、
それに気づかないようなみんなにも、
偉そうに物言える権利なくない?」
あぁ・・・。
つい、本音が。
俺って、何喋っても感じ悪くなるんだよな。
口調的に。
「えっ、ご、ごめん・・・っ!」
咄嗟に謝った女子に、
俺は追い討ちをかけてしまった。
「何に対して謝ってるか、
自分でちゃんと分かってる?」
「っ・・・。」
あ、まただ。
また、人を責めてしまった。
いつもこうだ。
少し癪にさわると、
すぐ口にしてしまう。
後から後悔することくらい、
分かっているのに。
まただ・・・。
また、人を、
俺は・・・。
そんな俺の後悔の念は、
明るい声にかき消された。
「まあ、そうだよな!
佐倉が言ってんの正しい!
オレらうるさかっただろ?
悪かった!」
と、口調こそ軽いものの、
さっきまで爆笑していた男子が、
突然頭を下げた。
急すぎて戸惑っていると、
そいつは、ばっと頭を上げ、
また、ヘラっとした表情に戻った。
なんだったんだ・・・。
そういえば彼は、
適当なところが目につくけど、
意外と、責任感のある人とか、
葉月が言っていた気がする。
言われてみれば、そうなのかもしれない。
「つーか、
佐倉が会話するのって、
この学校じゃ、優輝くらいだよなー!
いや、優輝が一方的に?」
「ああ。
葉月か。
確かに。
なかなか強引だとは思うよ。」
「ストレートに悪口?!」
「いや、
別に悪口じゃない。
あの強引さは、そこまで嫌な気分にはならない。」
「ははっ!
確かに、優輝はすげえいい奴だよな!」
「そこまでは言ってない。」
彼はまた吹き出し、
「佐倉って変な奴だな!」と言い切った。
このクラスは失礼な奴が多い…。
普通、目の前で変な奴なんていうか?
・・・そういえば、
人とこんなに話すのは久々かもしれない。
葉月とか、
・・・“アイツ”は除いてだけど。
っと、
いい加減この話は終わらせないと、
面倒なことになる。
そう思い、
またひとつトーンを落とし、
「俺の事は気にせず、
どうぞ話の続きを。」
みんなに向かってそう言った。
・・・俺のせいで、もの凄く盛り下がってはいるんだけど。
・・・怖がられてる、よな。
今まで黙りこくってた分、
余計にビビってるよな。
・・・別にいいけど。
クラスメイトなんて、
俺の人生に必要がないし、
クラスメイトにどう思われても、
俺は、興味ない。
俺の頭は、
もう手遅れなくらい、
ひねくれているようだ。
煩いな。』
普段なら風の囁きのように、
みんなの耳を通り過ぎるはずの、
俺の呟き。
なのに、
なんだこの状況。
俺の舌打ち、もとい呟きから数瞬。
騒がしかった教室は静まり返り、
さっきまで山中に向いていた視線は、
俺の方に集中している。
やばい。
そう思った時にはもう遅い。
みんなは、
怪奇現象でも見たかのような表情で、
俺の事を凝視している。
失敗した。
こんな事言ったら、目立ってしまうのに。
極力地味でいようと思っていたのに。
ひっそり生きようと思っていたのに。
まあでも、もう手遅れだ。
みんなが驚くのも無理はない。
なにせ、出席をとる時か、
授業中に当てられた時くらいしか
喋らない奴が、突然舌打ちして、
更に「 煩いな」 だからな。
と、一人で納得していると、
名前は出てこないけれど、
クラスメイトの女子が話しかけてきた。
「今のって…、
佐倉、君・・・?」
それはもう、
目が飛び出るんじゃないかと心配になる程、
目を見開いて。
はあ・・・。
今更はぐらかしたところでな・・・。
仕方ない。
もう、開き直ろう。
「うん。」
と、俺が返事をすると、
「えっ・・・。
ほん、と・・・?」
「うん。」
「舌打ち、したのも・・・?」
「だから、そうだって言ってるだろ。
いい加減しつこい。」
「・・・っ?!」
いや、そこまで絶句しなくても良くないか。
何気に失礼だから。
と、心の中で突っ込んでいると、
またもや名前が分からない男子が笑い出した。
「ぶはははっ!!
マジかよ!
佐倉って案外毒舌?!
新発見!!」
「あっそう。」
「ふはっ!
ひっでぇ!
あ、でもさぁ、
佐倉って、特定の奴とは喋ってるよな?」
「そうかな。」
そんなことはないけどな・・・。
一応返事をした。
その時、耳に飛び込んできたのは、
「えっ・・・?
あたし、佐倉君の声、
ちゃんと聞くのはじめてかも・・・。」
という、誰かの呟き。
確かに〜、なんて同意の声も。
は?
俺は無性に腹が立ち、
億劫だった筈の会話を、
自分からし始めていた。
「確かに、俺はみんなと喋るの極力避けてるし、
偉そうには言えない。」
俺のトーンを落とした声に、
教室内がまた静まる。
「けどさ、
俺の声、初めて聞いたとか言ってるけど、
それはさ、みんなが人の声に耳を傾けないからじゃない?
そんな風に言われると、気分悪い。
君らが普段騒がしくして、
迷惑だと思ってる人もいるのに、
それに気づかないようなみんなにも、
偉そうに物言える権利なくない?」
あぁ・・・。
つい、本音が。
俺って、何喋っても感じ悪くなるんだよな。
口調的に。
「えっ、ご、ごめん・・・っ!」
咄嗟に謝った女子に、
俺は追い討ちをかけてしまった。
「何に対して謝ってるか、
自分でちゃんと分かってる?」
「っ・・・。」
あ、まただ。
また、人を責めてしまった。
いつもこうだ。
少し癪にさわると、
すぐ口にしてしまう。
後から後悔することくらい、
分かっているのに。
まただ・・・。
また、人を、
俺は・・・。
そんな俺の後悔の念は、
明るい声にかき消された。
「まあ、そうだよな!
佐倉が言ってんの正しい!
オレらうるさかっただろ?
悪かった!」
と、口調こそ軽いものの、
さっきまで爆笑していた男子が、
突然頭を下げた。
急すぎて戸惑っていると、
そいつは、ばっと頭を上げ、
また、ヘラっとした表情に戻った。
なんだったんだ・・・。
そういえば彼は、
適当なところが目につくけど、
意外と、責任感のある人とか、
葉月が言っていた気がする。
言われてみれば、そうなのかもしれない。
「つーか、
佐倉が会話するのって、
この学校じゃ、優輝くらいだよなー!
いや、優輝が一方的に?」
「ああ。
葉月か。
確かに。
なかなか強引だとは思うよ。」
「ストレートに悪口?!」
「いや、
別に悪口じゃない。
あの強引さは、そこまで嫌な気分にはならない。」
「ははっ!
確かに、優輝はすげえいい奴だよな!」
「そこまでは言ってない。」
彼はまた吹き出し、
「佐倉って変な奴だな!」と言い切った。
このクラスは失礼な奴が多い…。
普通、目の前で変な奴なんていうか?
・・・そういえば、
人とこんなに話すのは久々かもしれない。
葉月とか、
・・・“アイツ”は除いてだけど。
っと、
いい加減この話は終わらせないと、
面倒なことになる。
そう思い、
またひとつトーンを落とし、
「俺の事は気にせず、
どうぞ話の続きを。」
みんなに向かってそう言った。
・・・俺のせいで、もの凄く盛り下がってはいるんだけど。
・・・怖がられてる、よな。
今まで黙りこくってた分、
余計にビビってるよな。
・・・別にいいけど。
クラスメイトなんて、
俺の人生に必要がないし、
クラスメイトにどう思われても、
俺は、興味ない。
俺の頭は、
もう手遅れなくらい、
ひねくれているようだ。