君ともう一度 あの春を迎えよう
ガラガラーッ

話が元に戻ったところに、

丁度担任が教室に入ってきた。

「はい、席つけー。
・・・って、
なんでそんな静かなんだお前ら。
珍しい、っつーか、
ちょっと気持ち悪いぞ?」

いつもと少し雰囲気の違う生徒達に、

苦笑いする担任。

けど、さっき俺がしでかしたことが、

まだ頭に残っているのか、

他の奴らは、黙り込んでしまっている。


俺が悪いのか?

そこまで気にしてくれなくてもいいんだけど。

すると、

担任の後ろから、葉月が顔を出した。

「なあ、センセー!
なんで転入生の事言ってくんなかったんだよー。
薄情者〜。」

「お前らに情報与えたら、
絶対うるせえだろうが。
一度騒ぎ出したお前ら、
俺の手に負えねんだよ。」

「はあ?
今、どっちかっつーと静かじゃん。」

「今は、だろ。
俺もよく分かんねーんだよ。
このクラスって、なんか掴めねーんだよな。」

と、ぶつぶつ言ってる担任を横目に、

葉月は、いたずらっ子のように笑っている。

すると、
さっきまで頭をひねっていた担任が、

ギンッと葉月を睨む。

その鋭い視線に気づいた葉月が、

びくっ、と体を震わせた。

「んなことより、葉月。
てめえ、三日連続課題忘れた上に、
現国も社会も英語も居眠りしてるらしいじゃねーか。」

「うっ・・・。」

「どの教科からもクレーム来てんだが?
どういうつもりだ、ああ?」

いや、ヤンキーかよ。

ガラ悪っ。

「センセー、なんも分かってねーなー!」

「あ?」

「あのなー、勉強はな、
まともな大人になるためにするんだよ。」

なぜか腕を組み、

偉そうに話す葉月に、

担任は、

面倒臭そうな顔をした。

「誰に向かって言ってんだ。
つか、
分かってんなら何でまじめにやんねーんだよ。」

「したくないから。」

ドヤァ、って効果音が聞こえそうなくらい口角を上げて、

そう言い放った葉月に、

担任は頬を引きつらせた。

「おい葉月。
今のセリフ、俺の目ぇ見て言え。
蹴っ飛ばしてやるから。」

「やってみろ!
体罰って訴えてやる。」

「お前ろくな大人になんねえよ。」

「別にそれでいいもんねっ!」

「やめろ可愛くねえ。
鳥肌たったわ。
可愛くねえやめろ。」

「ひでえ!」

終わりそうにない会話に担任もウンザリしたのか、

目を合わせることもなく、

葉月をぼかっと殴って、

俺らの方に向き直った。

葉月はその横で、
「体罰。暴力反対。」と、ぶつくさ言っている。

葉月を無視して、担任は、

「はいお前らー。
今からついに転入生が来るぞー。
美少女だからって、
お前らにはゲットできねーから、
くれぐれも調子にだけは乗んなよ。」

と言った。

いつもと同じ様子の担任に、

クラスの雰囲気も戻り、

ざわざわし始めた。

転入生って、

やっぱりほんとだったのか・・・。

嘘だと思いたかった。

例え一人でも、

これ以上人が増えるとか、

耐えられる気がしないんだけど。

「うしっ。
入っていいぞー。」

担任の声に、

ドアの向こう側の奴が反応して、

控えめにドアが開く。

ガラッ・・・

「失礼、します・・・。」

教室に入ってきたのは、

澄んだ瞳をした少女だった。
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