優しい音を奏でて…優音side
─── 5年生 春 ───
新学年になり、俺は奏の斜め後ろの席になった。
俺の前の席に座る佐藤康太(さとう こうた)は、俺の親友だ。
とても気さくで人懐っこくて、いい奴だ。
だけど、今回ばかりは、めっちゃムカつく。
康太は、運動が得意だが、勉強もそこそこできる。
なのに、毎日、毎時間、
「かなで〜、算数のノート貸して。
まとめのとこ、書ききれなかったぁ。」
「かなで〜、赤鉛筆、貸して。
俺の折れちゃった。」
と言って、奏にまとわりつくんだ。
俺が、『奏ちゃん』って言ってるのに、なんでお前が『かなで』って呼び捨てにしてるんだよ。
ああ!! もう、めっちゃ、ムカつく。
ある時、俺は、突然切れた。
「康太!
お前、かなで、かなで、うるさい!!
ノートなら、俺が貸す!」