優しい音を奏でて…優音side
俺が何度も何度も断り続けて、しばらく経った頃、部活帰りに奏に呼び止められた。
「ゆうくん、ちょっといい?」
その頃の俺は、思春期に入ったせいか、奏と話すだけで、心臓がバクバクと音を立てて暴れた。
俺は必死に平静を装って奏に微笑んだ。
「うん。」
「ゆうくん、これ。」
奏の手には、花柄のピンクのかわいらしい封筒が握られていた。
これは、もしかして、ラブレター!?
喜びに逸(はや)る気持ちを抑えて、ニヤける顔も一生懸命抑えて、結果、能面のような表情で、
「何?」
と答えた。
すると、奏は、
「恭子に頼まれたから…」
天国から、一気に地獄へ突き落とされたような気分だ。
何で、奏が、そんな物持って来るんだよ!
俺の片思いが確定した瞬間だった。
「いらない。返しといて。」
泣きたい気分なのを押し隠し、それだけ言って先に帰った。
俺みたいな一般庶民は、お姫様には、どうやっても手が届かないのかなぁ…