優しい音を奏でて…優音side
当日、待ち合わせの駅前に奏の姿があった。
濃紺のレトロな浴衣で、絞りで花火が描かれている。
腰まである髪をアップにした姿は、清楚なのに頸(うなじ)のおくれ毛にそこはかとない色気が漂う。
俺は、奏を他の男の目から隠したくて、そのまま連れ去ってしまいたい衝動を必死に抑えた。
俺たちは、シャトルバスで花火会場に行き、レジャーシートを広げて花火を見た。
俺は何とかして、奏の隣に座りたかったが、奏は女子の真ん中にいたから、俺の希望は叶わなかった。
それでも、奏と花火に行けた事で、俺の心はウキウキワクワクして、とても幸せだった。
それからも、河合はちょくちょくみんなを遊びに誘った。
俺は、奏が行く時だけ参加した。
俺は河合の事は、ラブレターの一件以来、嫌いになりかけてたが、奏とのお出かけを計画してくれた事には、心の底から感謝している。