優しい音を奏でて…優音side
─── 中学2年 秋 ───
3年生が部活動を引退し、俺たちが最高学年となった。
奏は、フルートのパートリーダー、俺は部長に選ばれた。
冬のアンサンブルコンテストに向けて、各パートリーダーと部長、副部長で、部活後に話し合う事もよくあった。
帰りが遅くなると、俺は奏を家まで送っていった。
奏は大丈夫だと言ったが、俺が一緒に帰りたかったんだ。
中学に入ってから、騒ぎすぎる俺の心臓のせいで、まともに話もできないでいたが、黙って並んで歩くだけでも、俺は幸せだった。
それでも、ぽつり、ぽつりといろいろな話をした。
メインは部活の事だったが、クラスの事、見たテレビの事、それから、進路の事。
俺んちは、代々、高学歴だ。
祖父は、銀行の元頭取で、父も銀行で部長をしている。いずれは頭取の座を狙っているに違いない。
だから、俺にも1番いい高校に行かせたがっている。
だけど、奏は地元の公立高校を志望している。
この辺りでは頭がいいと言われる高校だが、県下最高の偏差値ではない。
俺は、奏と同じ高校に行きたい。
だけど、両親も塾も、それを許さないだろうなぁ。