優しい音を奏でて…優音side
2月14日。
奏の誕生日。
今年は、ファンシーショップで買ったト音記号のイヤリング。
ゴールドのト音記号のチャームが耳元で揺れる様は、きっと奏に似合うはず。
去年のシュシュとも、合うに違いない。
奏は、みんなで出かける時、いつもあのシュシュしてくれていた。
それだけでとても幸せだと感じた。
ピンポーン ♪
奏の家のチャイムを鳴らす。
「はーい。」
この声は…。
ガチャっとドアが開いて、奏が出てきた。
落ち着いた茶色のニットワンピ。
奏にとてもよく似合っていた。
「ゆうくん。」
奏がにこっと笑う。
俺もつられて、にこっと笑った。
「奏、お誕生日、おめでとう。」
俺は小さな紙袋を渡した。
「ありがとう。」
奏はそう言って、紙袋を受け取ると、違う紙袋を差し出した。
「はい。毎年、一緒のでごめんね。」
「ううん。
俺、これ大好きだから、毎年、これが欲しい。
奏、ありがとう。」
奏が毎年くれるのは、ガトーショコラ。しっとり濃厚でとてもおいしい。
来年は受験、真っ只中。
チョコは無理かもなぁ…
帰宅した俺は、来年に想いを馳せつつ、ガトーショコラをおいしくいただいた。