優しい音を奏でて…優音side
─── 中学3年 8月8日 火曜日 ───
この日、俺は15歳になった。
朝、部活に行き、仲間とハンバーガーを食べ、14時に帰宅すると、なぜかうちのキッチンに奏がいた。
「え!? 奏!? 何で!?」
戸惑う俺を見て、奏と母さんがくすくす笑う。
「私が誘ったの。
奏ちゃん、いつも優音の誕生日に
手作りクッキーくれるじゃない?
もし、お料理が好きなら、今年は一緒に
優音の誕生日ケーキ、作らない?って。」
母さん、ナイスアシスト!
お陰で、奏と誕生日過ごせるよ。
「奏、いいの?
母さん、人使い、荒いよ?」
「優音!
余計な事言うと、奏ちゃんのケーキ、
食べさせないわよ!」
「あ、ごめんなさい。」
奏は、俺たちの親子喧嘩を見て、コロコロと笑う。
かわいい!
「葵ちゃん、優しいし、教え方も
分かり易いよ。」
葵ちゃんとは、母さんの事。
おばさんと呼ばれたくない母さんが、幼い奏に名前で呼ぶように強要したまま、現在に至る。