優しい音を奏でて…優音side
1週間後、俺は河合を同じ店に呼び出した。断るために。
河合は、ニコニコと嬉しそうに現れた。
「ごめんなさい。待った?」
河合を好きになれれば、楽しい恋愛ができるのだろう。
彼女いない歴21年…
まるで俺がイケてなくて、モテないみたいじゃん。
だけど…
やっぱり、俺は奏じゃなきゃ、ダメなんだ。
「河合、ごめん。
この間は、河合が嬉しそうで言えなかった
けど、俺、河合と付き合うつもりないんだ。
ほんとにごめん。」
俺は、テーブルに額が付きそうなほど、頭を下げた。
「………
もう少し、夢見させて欲しかったな。」
河合の目が悲しそうで、見ていられなかった。
「大丈夫。
ほんとは知ってたんだ。
あれが、付き合うっていう意味じゃないこと。
だから、気にしないで。」
そう言うと、河合は立ち上がった。
「もう会わないし、連絡もしない。
田崎くんの事は忘れる。
バイバイ。」
河合は、手をひらひらと振って店を出て行った。