優しい音を奏でて…優音side
1週間後、歯医者に行った俺は、帰り際に歯科衛生士のお姉さんにナンパされた。
その夜、俺は生まれて初めて、女性と大人の関係を持った。
その後も、声を掛けられれば、断る事なく、そういう関係を持った。
ただ、ちゃんと付き合うという面倒な事はしたくなかったので、ほとんどが1度きりの割り切った関係だった。
今まで奏しか見えてなかったけど、俺って結構モテるんだ。
しかし、彼女いない歴23年であった事が嘘のような女漬けの生活を1年近く送ったが、心満たされる事はなく、虚しいだけだった。
24歳のゴールデンウィーク、たまたま誘われた女と買い物に出た先で、奏を見かけた。
化粧をした奏は、すっかり大人の女だった。
声を掛けたかったが、なんだか自分が汚れてる気がして、できなかった。
俺は、何をしてるんだろう?
胸を張って奏に会えない生活をして、何になるんだろう?
俺はその日、その女と関係を持つ事はなく、帰宅した。
その日以来、俺は女遊びをやめた。
今までも、仕事で手を抜いた事はなかったが、更に一層、仕事に没頭した。
─── 27歳 秋 ───
努力が認められて、最年少で課長に抜擢された。
ただ、半年前に父が頭取に就任していたために、親の七光りだと陰口も散々言われた。
俺は、噂を払拭するだけの実績を作ろうと、更に仕事に邁進した。