優しい音を奏でて…優音side
「久しぶり。」
俺は穏やかに微笑んだ。
いろいろあったが、会えた事が何より嬉しかったから。
「…うん。久しぶり。」
奏が、微笑んだ。
久しぶりに見る奏の笑顔が、俺の心をざわつかせる。
やっぱり、奏が好きだ。
「西田さん、こちら、田崎優音くん。
同級生なんです。」
と、隣にいる女性に紹介した。
「そっか。
ゆうくん、OK銀行に就職したって聞いてた
けど、本社だったんだね。」
突然の再会に奏も驚いているようだ。
「うん。
今、5階の市場金融部ってとこにいる。
奏は?
東京にいるんじゃなかった?」
出来るだけ平静を装って、近況を探る。
「今年の春、帰って来たの。
で、今日からここの別館3階でパート勤務。」
はぁっ!?
パート!?
奏、主婦なのか?
「パート? 結婚したの?」
俺は、動揺を隠しきれない。
「ふふっ。違うよ。
無職じゃ、家賃も払えないから、とりあえず、
つなぎで半年間パートなの。」
ふぅぅぅっ…
良かった。
「そうなんだ。
…もっと話したいけど、俺、もう時間だから
行かなきゃ。
奏は、いつも昼休み、この時間?」
「今週は12時40分から40分なんだって。
一週間交代で、来週は12時からって言ってた。」
「そっか。
じゃあ、また会えるといいな。
お先に。」
「うん。またね」
よし!
仕事が許す限り、この時間に昼休みを取ろう。
そう考えながら、午後の仕事に戻った。