優しい音を奏でて…優音side
─── 12月8日 土曜日 ───
俺は、直接、奏の部屋を訪問する事にした。
昼休憩だけでは時間が足りないし、何より周りの目が気になる。
12時少し前。
ピンポーン ♪
俺は、奏の部屋のチャイムを鳴らす。
─── ガチャ
ドアが開いて、奏が顔を覗かせた。
すっぴんだ!
昔に戻ったみたいで、余計にかわいく見える。
「こんにちは。」
俺が挨拶すると、
「こんにちは…
どうしたの?」
不思議そうな顔をして奏が答える。
「腹減ったから、昼飯行かないかなぁ…と
思って。」
「えぇ〜!?
でも、私、スッピンだし…」
驚いた顔もめっちゃかわいい!
「別にいいじゃん。
奏はそのままでもかわいいし。」
言えた!
うん。
かわいいものはかわいい。
もう思った事は正直に言おう。
伝えないで後悔する事は、もうしない。
「ムリ!! 絶対、ムリ!!」
焦る奏もかわいい。
「何で? 俺、気にしないよ!?」
「私が気にするの!!」
怒った奏もかわいい。
「じゃあ、奏の化粧が終わるの待ってるから、
それから行こ?」
奏が何をしてもどんな顔をしてもかわいく見える。
俺がおかしいのか!?
いや、奏がかわいすぎるんだな、きっと。
「なぁ? 行こ?」
困っている奏に畳み掛ける。
「分かった。15分待ってて。
ゆうくんの部屋に呼びに行くよ。」
俺はほんのちょっとでも離れたくない。
「ここで待ってちゃダメ?」
「ここで!?」
奏がまた驚く。
「うん。奏が化粧してるとこ、見てる。」
「っ!!
ダメに決まってるでしょ!!
大人しく、部屋で待ってて。
ゆうくん、何号室?」
くくっっ…
奏、めっちゃ焦ってる。
かわいい。
「うちは502だよ。
でも、俺は奏といたい。
化粧してるとこ見ないから、ダメ?」
ふぅぅっっっ……
奏のため息が聞こえた。
「分かった。じゃあ、絶対に見ないでよ。
ピアノでも弾いてて。」
やった!
優しい奏は、押しに弱い。