優しい音を奏でて…優音side
「奏、何食べたい?
就職&引っ越し祝いにおごってやるよ。」
「えぇ!? いいよ。
私、1年前まではちゃんと働いてたから、
それなりに蓄えはあるんだよ。」
奢られて当たり前って女もいるのに、そういうとこ、ちゃんとしてるんだな。
「いいの! 俺が奢りたいんだから。
和洋中、何でもいいよ。」
でも、俺には甘えて欲しい。
「じゃあ、お蕎麦。
引っ越し蕎麦、食べてないから、付き合って。」
「そんなので、いいの?」
「うん。」
「じゃあ、おいしいとこあるから、車で行こ。
歩ける距離じゃないから。」
俺は、奏の手を取った。
子供の頃からずっと繋ぎたかった奏の手は、女性にしては大きいのに華奢だった。
「ちょっ、ちょっと待って。鍵!」
焦って手を振りほどく奏もかわいい。
だから、奏が鍵を片付けるとまた手を繋いだ。