優しい音を奏でて…優音side

「どうぞ。」

と助手席のドアを開けると、

「ありがと。お邪魔します。」

と遠慮がちに助手席に座る。


運転中も隣に座る奏がかわいくて、信号待ちの度についつい見てしまう。

蕎麦屋に着いても、奏から離れ難くて、向かいではなく、隣の席に座った。

ずっと奏への想いを我慢してたからなのか、奏への想いが溢れて、抑えきれない。


蕎麦を注文して、待つ間、気になってた事を聞いてみた。

「奏、金曜の夜のバイトって、何してるの?」

まさか水商売じゃないよな?

「えっ? あぁ。
駅前のホテルの最上階にピアノバーがあるの、
知ってる?」

えっ!?
まさか奏がほんとに水商売!?

「あぁ。
前に1回だけ職場の人と行ったことあるよ。」

「そこで、毎週金曜日にピアノ弾かせて
もらってるの。」

「っっ!!
言ってくれれば、絶対、聴きに行ったのに。」

あぁ、良かった。
ピアノかぁ。

「ぷっ
そんなに悔しがらなくても…
ふふふっ」

「来週も弾く?」

「うん。でも、来なくていいよ。」

「何で? 絶対行く!」

「あそこ、安くないし…
ピアノ聴きたいなら、部屋で弾いてあげる
から。」

奏、言う事が、いちいちかわいい。

「!!
それって、プライベートコンサート?
それもめっちゃ嬉しい!
でも!!
ピアノバーで弾く奏も見たい!
だから、絶対行く!!」

そういえば、子供の頃、奏の発表会 見て、衝撃受けたなぁ。


奏がドレスなんか着て、酔っ払いの前に出たら、何されるか分かったもんじゃない。

ここは、俺が守らないと!!

「じゃあ、来てもいいけど、無駄遣いしない
でね。アルコール1杯で十分だからね。」

奏のそんな気遣いもかわいくて、嬉しい。


蕎麦が来た。

「奏、海老天好きだろ?
2本あるから、1本やる。」

そう言って、俺は、奏の蕎麦の上に海老天を乗せた。

目を丸くする奏もかわいい。
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