優しい音を奏でて…優音side

「奏、楽しかった?」
おばさんが尋ねると、

「うん。」
と奏がニコニコ答えた。


「じゃあ、また来週ね。」
母がそう挨拶したので、俺は、

「かなでちゃん、バイバイ。」
と言った。

すると!!

「ゆうくん、バイバイ。」

奏が小さな声で言った。

奏が初めて、俺を呼んで、俺に話し掛けてくれた!


俺は、普段、友達や周りの大人からは、『ゆうちゃん』って呼ばれる事が多かったから、初めて呼ばれた『ゆうくん』という呼び名は、とても新鮮で、特別な感じがした。



これが、俺の長い片思いの始まりだった。



帰りの車の中で、母は、バイオリンに乗り気じゃなかった俺を心配して尋ねた。

「どう?
来週からもバイオリン、がんばれそう?」

俺はもちろん、

「うん! 来週も来るよ! 楽しみ。」

と答えた。

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