優しい音を奏でて…優音side
第2ステージ。
さっきより、音が優しい。
かと思えば、激しく強くなる。
表現の幅が広い。
音に感情が乗ってる感じがする。
胸の奥に伝わるものがある。
感動した。
演奏を終えると、奏はまた俺の所に来た。
「何か飲む?」
と聞いたが
「ううん。」
と首を横に振るので、
「じゃあ、帰ろう。送るよ。」
と席を立った。
奏が、控え室にドレスがあると言うから、荷物を取りに行く。
俺が、奏の荷物を取ると、
「ありがと。」
と奏が上目遣いでお礼を言う。
その視線にキュンとなって、思わず空いた方の手で奏の手を取った。
帰りは特に何も喋らなかったけど、手から伝わる温もりを感じて歩いた。
奏の部屋の前で荷物を渡すと、
「ありがと。
荷物も。聴きに来てくれたことも。」
と、また上目遣いでお礼を言われた。
そんな奏を見ると、胸がキュンと切なくなる。
「こちらこそ、ありがとう。
素敵な演奏だった。
おやすみ…」
「おやすみなさい。」
それだけようやく伝えて、俺は、奏の部屋を後にした。