優しい音を奏でて…優音side
17時。
ピンポーン ♪
奏と晩ご飯を食べに行きたくて、奏の部屋のチャイムを鳴らした。
─── ガチャ
奏がドアを開ける。
「こんにちは。」
俺が挨拶をすると、
「こんにちは。」
と奏も返す。
「晩飯、行かない?」
「行かない。」
そんなにすぐに断らなくても…
「なんで?」
と聞くと、
「この後、デートだから。」
と、とんでもない答えが返って来た。
「はぁっ!?
誰と!?
この間、彼氏いないっつったじゃん!」
しまった!
大人気なくムキになってしまった。
「ふふっ。
彼氏はいないよ。
今日は葵(あおい)ちゃんとデートなの♡」
「っ!!
あおい…ちゃん…って、おふくろ!?
何で!?」
「引っ越し祝い&就職祝い?
葵ちゃんは、私の第2の母だから?
ふふふっ。」
なんで母さんが俺の邪魔するかなぁ。
呆気にとられて、言葉も出ない。
「そろそろ支度を始めるから、また今度ね。」
そう言って、奏はドアを閉めようとする。
「ちょっと待て!」
俺は焦って、携帯を取り出し、母に電話した。
「もしもし? 母さん?
母さん、今日、奏とデートってほんと?」
『ほんとよ〜。いいでしょ?』
「でも、ごめん、それ、キャンセルで。」
『なんで〜?』
「何でって、俺がこれから奏とデートする
から。」
「ちょっ!
ゆうくん!!
何、言ってんの!?」
奏が焦って口を挟む。
『えぇ〜!?』
「じゃ、そういう事で。」
『だったら、如月の懐石予約してあるから、
いってらっしゃい。キャンセルも面倒だし。』
「ふーん、分かった。じゃね。」