くまさんとうさぎさんの秘密
同窓会
by 時田 総一郎
宇佐美さんと俺と山本さんは、前嶋さんの店で、落ち合った。山本さんは、とても勉強熱心な人だった。
宇佐美さんが、家に電話するとかで席をたった隙に、俺は、例の文集を取り出した。
山本さんは、追悼文集を見たとき、一瞬、遠い目をした。
そのあと、彼は、俺の顔を見て、ポツリと言った。
「時田さん、あなたは、誰で、何をしている人ですか??」
「私は、熊谷先生の晩年の学生で、今は3Dプリンターの会社で働いています。」
「そうか。。何が知りたくて来ましたか?どこでこれを??」
「これを編纂したのが宇佐美さんで、文集自体は、熊谷さんの息子さんから受け取りました。」
「息子さんか。。確か、熊谷さんところの息子さんは、ものすごく優秀だったって。。今、いくつなのかな??」
「もうすぐ二十歳ですよ。」
「怖いなぁ。」
「怖い??」
「いや、時間の流れが怖いと思って。」
「そうですか。」
「その論文に名前が載っている人間のうち1人は、もう、死んでるんです。」
「死んでる??」
「それ、人間科学と医学部の学生巻き込んで、人間科学部の菱川さんが中心になって進めてた研究なんです。目的は、もちろん、動画の再生だった。俺たち、はじめは、とても良いものができたと思ってたんだ。」
「良いもの??」
「数値の良いもの。安全性の高いものだよ。」
「安全性ですか。。違ったんですね。」
「後から、計器の針がふりきれていただけだったと気がついた。」
「針が振り切れるって、、、」
「何も分からないままに、仲間が二人死んで、指導していた菱川は、逃げたんです。。もちろん、その事が原因かどうかは、分からない。分からないけど、調べもしないなんて、、なんてひどいんだと、当時は思いました。それが、俺が医学部に入り直した理由です。」
山本さんは、疲れた顔をした。
「孤独でした。誰に相談しても、お茶を濁すような返事しかなくて、1人で前に進むしかないと思った。医学部には、実際には、計器を借りてただけなんです。巻き込まれたのは、医学部の学生で、本当に良い奴でした。一人っ子で、両親は市役所にお勤めのサラリーマンと主婦でした。」
「そうですか。」
「今は、でも、当時の自分とは、違う心持ちでここにいます。彼の家族も、熊谷さんの家族も、病気だと思ってるから、諦められる。いくら医者だって、亡くなった人に何もできないんですよ。僕に今分かることは、それだけです。」
俺は、それ以上の事を彼に積極的に尋ねるのは止めた。
「時田さん、もしかして、あなた、中野馨を知ってますか?」
「うちの会社と、しょっちゅうタッグで研究しています。」
「やっぱりそうか、。彼女、優秀ですね。第2世代の母親というか。俺達には、思いつかないことをやってのけた。もしかして、メタルで動画の再生ができてたりしますか??」
「それは、秘密です。」
「心配しないで。どうせ、僕には何も分からない。すごいなあ。できそうなんでしょ。できちゃったのかな。?!」
彼は、また、遠い目をした。
俺は答えなかった。
宇佐美さんと俺と山本さんは、前嶋さんの店で、落ち合った。山本さんは、とても勉強熱心な人だった。
宇佐美さんが、家に電話するとかで席をたった隙に、俺は、例の文集を取り出した。
山本さんは、追悼文集を見たとき、一瞬、遠い目をした。
そのあと、彼は、俺の顔を見て、ポツリと言った。
「時田さん、あなたは、誰で、何をしている人ですか??」
「私は、熊谷先生の晩年の学生で、今は3Dプリンターの会社で働いています。」
「そうか。。何が知りたくて来ましたか?どこでこれを??」
「これを編纂したのが宇佐美さんで、文集自体は、熊谷さんの息子さんから受け取りました。」
「息子さんか。。確か、熊谷さんところの息子さんは、ものすごく優秀だったって。。今、いくつなのかな??」
「もうすぐ二十歳ですよ。」
「怖いなぁ。」
「怖い??」
「いや、時間の流れが怖いと思って。」
「そうですか。」
「その論文に名前が載っている人間のうち1人は、もう、死んでるんです。」
「死んでる??」
「それ、人間科学と医学部の学生巻き込んで、人間科学部の菱川さんが中心になって進めてた研究なんです。目的は、もちろん、動画の再生だった。俺たち、はじめは、とても良いものができたと思ってたんだ。」
「良いもの??」
「数値の良いもの。安全性の高いものだよ。」
「安全性ですか。。違ったんですね。」
「後から、計器の針がふりきれていただけだったと気がついた。」
「針が振り切れるって、、、」
「何も分からないままに、仲間が二人死んで、指導していた菱川は、逃げたんです。。もちろん、その事が原因かどうかは、分からない。分からないけど、調べもしないなんて、、なんてひどいんだと、当時は思いました。それが、俺が医学部に入り直した理由です。」
山本さんは、疲れた顔をした。
「孤独でした。誰に相談しても、お茶を濁すような返事しかなくて、1人で前に進むしかないと思った。医学部には、実際には、計器を借りてただけなんです。巻き込まれたのは、医学部の学生で、本当に良い奴でした。一人っ子で、両親は市役所にお勤めのサラリーマンと主婦でした。」
「そうですか。」
「今は、でも、当時の自分とは、違う心持ちでここにいます。彼の家族も、熊谷さんの家族も、病気だと思ってるから、諦められる。いくら医者だって、亡くなった人に何もできないんですよ。僕に今分かることは、それだけです。」
俺は、それ以上の事を彼に積極的に尋ねるのは止めた。
「時田さん、もしかして、あなた、中野馨を知ってますか?」
「うちの会社と、しょっちゅうタッグで研究しています。」
「やっぱりそうか、。彼女、優秀ですね。第2世代の母親というか。俺達には、思いつかないことをやってのけた。もしかして、メタルで動画の再生ができてたりしますか??」
「それは、秘密です。」
「心配しないで。どうせ、僕には何も分からない。すごいなあ。できそうなんでしょ。できちゃったのかな。?!」
彼は、また、遠い目をした。
俺は答えなかった。