くまさんとうさぎさんの秘密
by 柳瀬 隆司
奴がいなくなった後、しばらく、俺たち二人は抱き合ったままでした。
「良かったのかな??私、いらないことした??」みやこが、俺の頭を抱いたまま言った。
「、、、」
「隆司は、私が元カレで困ってる時も、私の意思確認してくれたじゃん。状況から判断しちゃったけど、、大丈夫だった??」
「いや、助かった。お前、やっぱ、めちゃめちゃ男前だよ。」
俺は、答える。
「そっか。。」
「俺も、あいつが好きだったんだと思う。受け入れるとか無理だけど。俺が悪いんだよ。」
「何で??」
「あいつ、別に始めから歪んでたわけじゃないんだ。何回も、好きって言われてたけど、俺、分かってなかった。めちゃめちゃいい友達だと思ってたし、俺も、きよしはかっこいいってずっと言ってた。あいつからしたら、両想いと思ってたかも。あいつは、独占欲も性欲もあって、俺は、そこんとこ自分で自覚してなかった。気が付いてなかったら、心にチクリ程度だけどさ、自覚してる奴は、他の人紹介されたら、傷つくだろ??栞ちゃん紹介したの、俺なんだよね。」
「、、、松野さんは、知ってるの??」
「多分知ってる。きよしは、嘘がつけない人間だよ。栞ちゃんが切ない思いしてても、そういうのは分かっちゃうんじゃないかな。」
「松野さんのことは、松野さんのことで、大事にしてるようには見えるね。」

その時、部室の扉が開いた。
「あっ、、」下の学年の子が、ふらっと扉を開けたのだ。
俺を抱きしめる平林の手に力が入った。彼女が、それから、扉を開けた子も、アワアワと慌てている。

「ごめんなさい!!」と、大きな声で叫んだあと、扉はバタンと閉じられた。。

「あらら、、。。彼女、めちゃめちゃ熱心なんだ。私、すさんだ女と思われてるかも。何回かソファーで寝てるのも見られてんだよね。。」

みやこは、ここのところ、部室で寝泊まりしている。時々、運動部にシャワー借りに行ってるのも知ってる。はっきり聞く前から、多分、寝るところがないんだろうなあとは思っていた。

「みやこ、下宿借りなおす金がないんじゃないの??」
「よく見てるね。実家に帰ったりもしてたし、もともとすれ違いだったけど、同棲解消して2か月くらいかな??いろいろあって、実家にも帰りづらい感じ。正直、まいってんの。」

「俺さ、失恋したてのゲイだけど、良かったら、俺んちに一緒に住む??」
俺は言った。

「甘えちゃおっかな。。」意外なことに、力ない声が返ってきた。

「元カレのことは、応えたんだ。何が応えたって、「私、全くこの人好きじゃないわ」ってことが、どうしようもなく応えた。女子として劣等感強いからさ。そこをくすぐられることと、好きってこと勘違いしてた。もうさ、男になんか絶望しきってるわけ。誰かに助けてもらおうなんて思ってないんだよ。でも、一人で生きてくのは無理だからさ。安心して尽くせる人捜してる。男でも、女でも、裏切らない人。。」

みやこは、本当にいい女だ。ちょっと傷つきやすかったり、でも、そういうこと百も承知で人を守ろうとするところとか。

「失礼承知で言うけどさ、お前の爆乳に、俺は何の性欲も感じないわけ。だけど、抱きしめられたら、安心できる。多分、みやこに何の下心もないからだろうな。」
「性欲って何だろうね。私も、隆二は安心して抱きしめられるけど、男は無理。隆二に何の下心もないからだろうね。」
皮肉なもんだ。
「私はもうないと思うけどさ、お互い、次に恋愛するまで一緒に暮らそうか?」
「お前だって、、そんな意固地にならなくたって、守ってくれるような男もできるかもよ。」
「隆司は一緒に逃げてくれたじゃん。」
「熊谷が助けてくれたろ」
「私、ああいうの苦手だって言ってんじゃん。ああいう、男子たるものみたいなの。」

「俺も、あいつ嫌い。宇佐ちゃんと付き合ってるのが許せない。」
私たちは、笑った。
「ああ、でもさ、あの二人、春先に、オープンカーでお花見デートしてたよ。あの二人はあの二人で、幸せそうで良いかな。」
「花見なら、俺も連れてってやるよ。とっておきのとこ。いっつもツーリングするんだ。バイク仲間は、結構いい男多いよ。良かったら紹介しようか??」
「花見いいね。でも、男紹介はいらないかな。あんたと私も、男の趣味合わなさそうじゃん。隆司、あいつのこと好きだったでしょ。」
「そうだね。」
「だからさ、男の紹介はいらないよ。二人で行こう」
「了解」
俺たちは笑った。
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