くまさんとうさぎさんの秘密
そういう訳で、最初に俺に火をつけたのは親父だった。
でも、、、結果的に俺の背中を強く押しちゃったのは、彼女の息子の存在だ。
昔から、めちゃめちゃ可愛い子で、男の子だけど愛されてた。彼女の母性には、俺は好感持ってたし、写真見せてもらっても愛くるしくて、だから、彼女が息子の成長を喜ぶことも、微笑ましく思ってた。
けれども、息子さんが店に出入りするようになって、だんだん話が変わってきてしまった。畑違いで正確なところ分からないけれど、いろいろ頼むにあたり相場みたいなものも調べさせてもらった。多分、彼らは、有能だった。実際、学生のアルバイト価格でプロ以上の仕事をしたから、こちらからしたら、本当に良い取引になった。人の成長を妨げてはならない。諦めなきゃ、諦めなきゃと思い詰めて自分に言い聞かせてた時に、俺はとんでもないもん見てしてしまった。
それは、ガラスのドームの中のひとみの立体動画だった。背中に羽があった。蝶の羽が二枚ヒラヒラと揺れて、ふわりとひとみの体が宙に浮いた。ひとみは空に手を伸ばして、ドームの内壁に触れた。
「凄いね。これ、何なの?箱に入れて飾っときたいとかそういうやつ?」俺は、彼女の息子なのにどうしようもなくイライラした。
「アニメのコスプレです。プリクラの3次元動画版というか。動画撮影するだけで、アニメのキャラクターに変身できる仕組みです。本当は、使えるもの作りたいんだけど、研究資金が必要なんですよ。だから、まずは精度求められないオモチャからこの技術を売るんです。」
何か、ご立派なこと言いやがった。こいつ。。
「これ、俺もらっていい??」
「良いですよ。サンプルとして1つおわたしします。前嶋さんの動画を撮影しましょうか?」
「嫌、いいよ。鳥籠やら虫籠に入る趣味ない。」
「了解です。じゃ、モデルがひとみで申し訳ないんですけど、どうぞ。」と、義明君はこちらにそれをよこした。

どうしようもなく、それが扇情的な物に見えた。手の中にあって、絶対に触れられないもの。
強欲で、色気があって。。
それが、どうしようもなく俺を刺激した。
欲しいもんは欲しいし、それに見合う努力もしてきた。

もう、自分がどうするか、他の選択肢なんかなかった。それは、喉から手が出るほどほしいと思ってる物から、手に入れると心に決めたものに変わった。
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