くまさんとうさぎさんの秘密
星の巡り合わせ
by宇佐美 優那
高3の夏は、もうすぐ。
進路への不安と、今しかできないことへの期待が、落ち着かない風を運んでくる。
くまさんのことをあまり知らなかったけど、くまさんは、頭がいい。勉強だけじゃなくて、行動を伴ってるから、すごい。
時々、何言ってるのか分かんないけれど、友達のことも家族のことも、考え抜いた末の行動と分かるから、よく分かんないけど、黙って従っといた方がいい。

その日、ずっと何の連絡もなかった澤谷さんから、久しぶりに着信があった。私は、電話には出なかったけど、1度はちゃんと話をしなければならないのは分かってた。そもそも、締め切りだったはずの日をすぎていて、最終的に原稿落とさずに済む実質の締め切りも、もうすぐだった。
その前に、この関係に白黒つけないと、何の話も前に進まないだろう。

くまさんに、着信について話したところ、あの日の関係者が集まって、みんなで話をすることになった。というのも、澤谷さんが私を引きずり倒した時に、店のグラスと照明も割れていた。後日、澤谷さんから、店のオーナーさんに連絡があったらしい。オーナーさんは、来られたら迷惑だから、こちらから連絡するということで、話は保留になっていた。
オーナーさんから、澤谷さんに、「お話があるなら、お伺いします」という連絡を入れてもらえた。連絡したところ、澤谷さんは、店が休みの日にやって来ることになったらしい。。
そこに同席することについては、私から澤谷さんに電話で伝えた。
「私が悪かったんです。でも、お付き合いはできません。連載のことも、お互いの家族のことも、お付き合いしている間にもらっちゃったもののこともあるから、一度お会いしましょう。お店の警備会社の人から連絡もらいました。澤谷さんがお店に来るときに、同席して良いですか??」
「了解」と、澤谷さんは、電話の向こうで低い声で唸った。
オーナーさんは、弁償ではなく、今後一切入店しないことを約束させる予定なのだそうだ。

気が重いったらない。
私みたいな人間に、何でみんな、そんなに優しいんだろう。後で、とんでもなく責められたり、怒られたり、負債を負ったりなんてことにならないだろうか。。
澤谷さんが悪いんじゃない。色目使ったみたいになってしまった自分が悪い。軽い女になってしまった自分が悪い。。 はっきり言えなかった自分が悪い。

当日は、澤谷さんが店に着いてから、警備会社の人と、ひとみさんと一緒に店まで移動することになった。私が澤谷さんと二人で接触しないための配慮ということだった。

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