くまさんとうさぎさんの秘密
「こんにちは」と、くまさんは言った。
「義明、お帰り。こちら、宇佐美さん。あなたのお父さんのお友達よ。」と、おばあさんは重ねた。
「覚えてるよ。」と、くまさんは言った。
「そうなの?」と、私が、聞き返すと、
「俺、お前にも、昔一回会ってる。」と、小声で教えてくれた。
「義明君、本当に立派になったね。」と、お父さんは、くまさんを見上げた。
「若いころの熊谷さんにそっくりだ。」と、お父さんは感心した。
私は、熊谷さんについて思い出した。
そもそも、くまさんのお父さんの熊谷さんは、伝説の人だった。
お父さんと熊谷さんは、大学の先輩後輩であると共に、柔道場の先輩後輩でもあった。
熊谷さんは、大学卒業と共にフランスにわたったと聞いていたが、その後の話は、そもそもくまさんから聞いていた。
フランスで柔術に転向して、カナダにわたって、ひとみさんに出会ったのだ。
お父さんたちは、大学でも、柔道の先輩後輩どうしだった。
大学の柔道部は、今では考えられないくらい粗暴だったらしい。
というのも、少年の発育に考慮された、近代的な講道館のルールを最後まで守らなかったのは、
お父さんの出身校も含めた旧帝大のリーグだったそうだ。講道館のルールを広げたのは、柔道の創始者の文部科学省官僚だ。出身大学によって派閥があり、お父さんの大学は、最後の最後まで、講道館のルールを受け入れず、「寝技待ったなし」つまり、しめ落とすまでやるという気合の入った練習がなくならなかったそうだ。
しかしまあ、お父さん曰く、「そんなのは、熊谷さんみたいに強い人の話で合って、俺はずっと亀になってた」そうだ。
つまり、柔道場で育った二人にとって、大学の稽古で一番気を付けなければならないのは、
背負った後、寝技につかまってしめ落とされることだったそうだ。
特に、お父さんは、途中で腰を痛めて、もっぱら熊谷さんの応援をしていたらしい。。
あらら、
「義明君、優那がお世話になってるらしいね。」と、お父さんは言った。お父さんは、どこかぼうっとしていた。
おばあさんが、笑った。
「あらあら、あなたたち、知り合いなの??」
「熊谷君とは、今、高校で同じクラスなんです」と、私は言った。
「優那ちゃん、高校は義明と同じなのね。。世の中狭いわね。」と、おばあさんが言った。
「義明君、いろいろと迷惑かけているかもしれないけど、これからもよろしく頼むよ」と、お父さんは言った。。
ちょっと待って??
「何も迷惑とかないですよ。」と、くまさんは言った。
「仲良くしてもらえて、嬉しいです。」と、くまさんは、重ねた。
「今日は突然だから、また、日を改めて、お母さんにも挨拶をさせてもらうよ。」と、お父さんは言った。
「はい。今日は、母はまだ帰らないので、またの機会にお待ちしています。」と、くまさんがさわやかに答えた。
私は、お父さんの服の袖を引っ張った。
お父さんが振り返る。
「??」お父さんは、どこかぼうっとしていた。
「お父さん、送ってくよ」と、私は言った。
「そうか」と、お父さんは言った。
角を曲がって、くまさんとおばあさんの姿が見えなくなると、お父さんが言った。
「優那。。お前、帰ってこなくていいぞ。」
私は、打ちのめされた。。
「澤谷より、よっぽど良い話じゃないか。」
「お父さん、何のこと??」
「熊谷家に嫁に行くんだろ。」
「・・・・。そんな話一度も出てないよ。」
「そうなのか。。とにかく、今は母さんと澤谷がややこしいから、お前は熊谷さんちにいなさい。お父さんがうまく言っとくから」
と、意外な展開になってしまった。
そして、おとうさんは、呆然とする私を残して、すたすたと帰って行ってしまった。。。
「義明、お帰り。こちら、宇佐美さん。あなたのお父さんのお友達よ。」と、おばあさんは重ねた。
「覚えてるよ。」と、くまさんは言った。
「そうなの?」と、私が、聞き返すと、
「俺、お前にも、昔一回会ってる。」と、小声で教えてくれた。
「義明君、本当に立派になったね。」と、お父さんは、くまさんを見上げた。
「若いころの熊谷さんにそっくりだ。」と、お父さんは感心した。
私は、熊谷さんについて思い出した。
そもそも、くまさんのお父さんの熊谷さんは、伝説の人だった。
お父さんと熊谷さんは、大学の先輩後輩であると共に、柔道場の先輩後輩でもあった。
熊谷さんは、大学卒業と共にフランスにわたったと聞いていたが、その後の話は、そもそもくまさんから聞いていた。
フランスで柔術に転向して、カナダにわたって、ひとみさんに出会ったのだ。
お父さんたちは、大学でも、柔道の先輩後輩どうしだった。
大学の柔道部は、今では考えられないくらい粗暴だったらしい。
というのも、少年の発育に考慮された、近代的な講道館のルールを最後まで守らなかったのは、
お父さんの出身校も含めた旧帝大のリーグだったそうだ。講道館のルールを広げたのは、柔道の創始者の文部科学省官僚だ。出身大学によって派閥があり、お父さんの大学は、最後の最後まで、講道館のルールを受け入れず、「寝技待ったなし」つまり、しめ落とすまでやるという気合の入った練習がなくならなかったそうだ。
しかしまあ、お父さん曰く、「そんなのは、熊谷さんみたいに強い人の話で合って、俺はずっと亀になってた」そうだ。
つまり、柔道場で育った二人にとって、大学の稽古で一番気を付けなければならないのは、
背負った後、寝技につかまってしめ落とされることだったそうだ。
特に、お父さんは、途中で腰を痛めて、もっぱら熊谷さんの応援をしていたらしい。。
あらら、
「義明君、優那がお世話になってるらしいね。」と、お父さんは言った。お父さんは、どこかぼうっとしていた。
おばあさんが、笑った。
「あらあら、あなたたち、知り合いなの??」
「熊谷君とは、今、高校で同じクラスなんです」と、私は言った。
「優那ちゃん、高校は義明と同じなのね。。世の中狭いわね。」と、おばあさんが言った。
「義明君、いろいろと迷惑かけているかもしれないけど、これからもよろしく頼むよ」と、お父さんは言った。。
ちょっと待って??
「何も迷惑とかないですよ。」と、くまさんは言った。
「仲良くしてもらえて、嬉しいです。」と、くまさんは、重ねた。
「今日は突然だから、また、日を改めて、お母さんにも挨拶をさせてもらうよ。」と、お父さんは言った。
「はい。今日は、母はまだ帰らないので、またの機会にお待ちしています。」と、くまさんがさわやかに答えた。
私は、お父さんの服の袖を引っ張った。
お父さんが振り返る。
「??」お父さんは、どこかぼうっとしていた。
「お父さん、送ってくよ」と、私は言った。
「そうか」と、お父さんは言った。
角を曲がって、くまさんとおばあさんの姿が見えなくなると、お父さんが言った。
「優那。。お前、帰ってこなくていいぞ。」
私は、打ちのめされた。。
「澤谷より、よっぽど良い話じゃないか。」
「お父さん、何のこと??」
「熊谷家に嫁に行くんだろ。」
「・・・・。そんな話一度も出てないよ。」
「そうなのか。。とにかく、今は母さんと澤谷がややこしいから、お前は熊谷さんちにいなさい。お父さんがうまく言っとくから」
と、意外な展開になってしまった。
そして、おとうさんは、呆然とする私を残して、すたすたと帰って行ってしまった。。。