くまさんとうさぎさんの秘密
卒業式の次の日、私は、熊谷家の二人のために朝ごはんを作った。
くまさんは、なににも「美味しい」とか「美味しくない」とか言わない人だから、「サンキュ」としか言わなかった。
多分、「サンキュ」も、安売りはしない人だから、満足してくれているんだと思う。
そして、ひとみさんは、野菜スープしか食べなかった。でも、野菜スープについては、美味しい美味しいって、何度も笑顔を見せてくれた。

くまさんは、今日は、下宿の鍵を受け取りに行く。私も、この日は部屋の整理をしていた。

仮住まいだからと自分に言い聞かせ、言い聞かせ、あまり物を増やさないようにしていたが、
気がついたら物が増えてしまっていた。

「優那ちゃん、」と、開いたままの扉からひとみさんが、覗いた。

「優那ちゃん、秋ごろに、うちに来ることできない??」と、ひとみさんは言った。

ひとみさんは、まだ体調が戻らないらしい。
一時の妖艶さが消えて、疲れた顔をしていた。
私は、ひとみさんが医者に出された薬を飲んでいないことは知っていて、違和感みたいなものは感じていた。
「秋ごろ、何かありますか?夏休みは、義明君も帰ってくると思うんだけど。。」
ひとみさんは、ちょっと困った顔をした。

「どうしても、どうしても、助けてほしいことがあるのよ。」と、ひとみさんは言った。
「。。」
ちょっと思い当たるふしがあった。
「近所はうろうろしてるんどけど、バイトがあるんで、、時々顔出すくらいなら、大丈夫ですよ。」
「うちも、バイトで来てもらうことできないかな。。優ちゃん、保育師さんなんだよね。。」
ひとみさんは、言ってから、よけいに疲れた顔をした。ここで、(いえ、無資格です)とか、突っ込むところではないんだろう。
「あのね、ひとみさん、もしかして、もしかしてなんですけど、私、間違ってたらごめんなさい。でも、、ちゃんと事情を聞いても良いですか??」
ひとみさんは、その場にへたりと座り込んで、そして、黙り込んでしまった。。1つ話すごとに、とても疲れているように見えて、痛々しかった。








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