くまさんとうさぎさんの秘密

トラウマ

by 熊谷 義明

大学に戻ってから、1週間は真面目に授業に出ることにした。中野先生のところも、変な噂になっちゃ迷惑だろうし、ひとまず1週間は距離をおき、こちらはこちらで持ち込む機材について準備することにした。

久々に教室に入った。授業が始まる時間だ。みんな席についているが、先生がなかなか来ない。。

ふと、今朝、洋治からもらった飴について、携帯で調べることを思い立った。俺の癖というか、習慣みたいなものだったから、本当に、何の気なしだった。袋に梱包されていて、ちょっと毒々しい色だけど、よくある飴ちゃんだ。
成分表が無かったが、名前が書いてあったので、名前を検索した。
今は、ネット上に成分表を載せている企業が多い。

けれど、、検索結果を見て、俺は目を疑った。。
危険ドラッグ。ちょっと目が覚めたので、画像検索した。。
間違いない。
突然、吐き気がした。。なんだこれ。。ひどく気分が悪くなり、動悸が激しくなった。。

思い出した。
俺が最終道場やめるに至った原因だが、最後にアレルギー発作を起こした時だ。
親父が死んで、ひとみが仲間外れにされてて、俺が他の人にもらったジュースに入っていた甘味料に酷いアレルギー症状を起こした時があった。
道場の人たちは、実は、誰も知らない。
ひとみも、俺も、結局何も話せないままにやめたから。
飲み残しのジュースをくれた兄ちゃんがいて、俺も、子ども心に、ちょっと飲んでみたいと思っていた。

飲んですぐ、症状は出なかったけど、迎えに来たひとみの車の中で、俺は、白目むいて意識を失ったらしい。その直前に強烈に苦しくなったことは覚えていて、、
何で今までそのことを覚えていなかったのか、分からなかった。。
が、思い出したい感覚ではなかった。

俺は、教室を飛び出して、トイレで吐いた。胃の中に物が無くなっても、吐き気は止まらなかった。
頭で考えなきゃ。俺は、変なもんは口にしていない。
今朝のモーニングは行きつけの店で、ひとみの知り合いで、10年以上お世話になってるものだからダイジョブだ。
吐き気だけで、意識はある。息ができないわけではない。
とりあえず、ひとみに電話することにした。
 
結局、今日も授業に出れないのかもしれない。
ちょっと調子に乗りすぎていた。






< 50 / 138 >

この作品をシェア

pagetop