くまさんとうさぎさんの秘密
女社会
by 宇佐美 優那
大学の中の風景も、見慣れてきた。
この日は、学内の売店で、あゆみに会った。
「久しぶり、元気??」と、私は、声をかけた。
「元気元気。」彼女は、めんどくさそうに返事した。以前なら、ひるむところだけど、彼女は、親しい人にもこの調子なんだということを、私は知ってる。
私は、軽音のライブにあゆみと洋治を誘った。松野さんに言われた通りに、ノルマのことも話した。何か、フェアじゃない気がして。
「半額にしてくれるんなら行くよ。」と、あゆみは言った。
「了解。半額で良いよ。」
「宇佐美さん、向いてないんじゃないの?」
あゆみは笑った。
「分かんないや。いつまで続くかもわからないし。宮迫さんは、何かサークル入ったの??」
「私は、長刀坂部。学祭でも、形を発表することになってるけど、チケットノルマとかないよ。パンフレットの広告は、実家が毎年広告出してるし、固定のところ以外に募集はしてないみたい。うち、母親もこの大学のOBだったんだ。」
「すごいね。親子で同じ大学とか、ちゃんとした家って感じ。」
「そんなんじゃないけど。。軽音のライブって、何でこんな高いの?ゲスト出演料??」
「場所代だって。大学でやらないの。ごめん、半額大丈夫??」
「いやいや、そういう意味じゃないよ。ゲスト、お笑いの人なんだよね。楽しみにしとくよ。」と、あゆみは言った。
「肥後橋君によろしくね。くまさんは、来るって言ってたけど、忙しそうだから、予定が合えばくらいのつもりなのかも。」
「ああ、洋治は無理かもね。一応チケットは買うけど、。無理ならだれか誘うよ。やっぱり、浪人生のプレッシャーすごいみたい。。いつも、会っても口数少なくなっちゃって、覇気がないというか。。」
お父さんに、予備校の話をしたときのことを覚えている。面と向かって頼んで、最終的に断られてしまった。お父さんは、
「お母さんが納得しないよ」と話してたけど、本当は、お父さんも同じ考えなんだと思う。
確かに、浪人したからと言って、自分が変われたかと言われれば、そんな自信ない。
今は、レベル下げて進学して本当に良かったと思う。
話が長くなりそうだったので、お昼に誘ったら、あゆみは午後の授業がなくてクラブまで暇潰ししてたらしい。
うちの学食には、名物のパフェがあって、あゆみはお昼抜いてパフェ食べると言い出したので、私もそうした。
「くまさんが見たらチクチク言いそう。「口にいれるものはえらべー」とか、「食べたものからしか体は作られないんだ」とか」
あゆみは笑った。
「言いそう。小さい頃から、真面目だったもん。何か、あいつ小さい頃からアレルギーあって、親がうるさかったみたい。」
初耳だ。
「知らなかった。私が作ったものなんだも食べてたよ。」
「ああ、何か、樹液。甘味料。家でご飯とかにはあんまりいれないやつ。多分、道場の連中も知らないと思う。でも、いつも、道場で配られるお菓子口にしないから、聞いたらさ、ポロッと話したことがあって。何年の頃か忘れたけど、向こうも話したことも忘れてたかも。」
「そう言えば、食材は全部生協で注文してたわ。私も、家にあるものでしか料理してない。いつも成分表見てたよ。あれは、理系男子の習性かと思ってたわ。」
「私も、食べ物って大事だと思うんだよね。でも、甘いものに関してはくまさんとは別。女子は男子の倍は必要だよね。」あゆみは、また、笑った。
「洋治はさ、来年は、地方でもどこでも進学するって。みんな、私が洋治に地元にいてほしいプレッシャーかけてるみたいに思ってんだけど、ちょっと違うんだよね。。」
話が洋治に戻った。
「うちらさ、ずっと地元でしょ。実家じゃん。どこ行っても知り合いばっかり。だからさ、洋治が地方いくなら、遠距離やって、洋治の下宿に遊びにいくのも良いかなって。そっちで就職するなら、ついて出てもいいとも思う。洋治は好きなんだけど、家族ぐるみの付き合いが、ちょっと重いんだよね。」と、あゆみは言った。
「そういうもんなんだ。。」
実家に帰りたくても帰れない私には、わいてこない気持ちだ。
私は、いまだに未練がましく実家の周りをうろうろしている。
「それはそうと、宇佐美さん、くまさんの下宿には遊びに行った??」と、あゆみは話題を変えた。
「行ってないよ。私が向こうに行く理由ないし、くまさんもちょくちょく帰ってきてるし。」
「もしかして、、あんたら、まだ何もないの??」と、あゆみが呆れたように言った。
またまた。あせらされてしまう。
「何もないよ。こっちからくまさんに何も言えないし、向こうだって、「宇佐美のことは嫌いじゃない」とか言ってたよ。向こうが距離取ろうとしてるし、私も今の距離でいいんだよ。今は。」
声が上ずる。
「宇佐美さんさ、くまさんちに押しかけちゃった時には、もうちょっと行動に出ちゃう子かと思ってた。今更そこでひいちゃってどうすんのさ。今の家にくまさんが嫁つれて帰ってきたらどうすんの。??」
「今は、、困る。23までそれはないって言ってたけど。。押しかけちゃった時は、いろいろあって混乱して、夢中だったの。今考えたら恥ずかしすぎるわ。何か、身の程知らずが身に染みてきて。。」
「今更??じゃあさ、23過ぎて嫁が来て、今のあんたの立場って、どういう風に説明されるわけ??昔の同居人??元内縁の妻??それで、、その時はすごすご出ていくの??そりゃあまあ、くまさんだって嫁とあそこに住むかどうか分かんないけど、くまさんがよそで別の女の子と暮らし始めたら、これってどういう状況よ。」
本当に、何も返事できなかった。
「向こうは、モテるよ。何気に女子受けは良いじゃん。学歴もあるし。学生NGのOLさんでも、くまさんなら働いてるわけだし、行けちゃうでしょ。下宿の方には別の女の子がおしかけちゃったりするかもよ。」
「そうなの??」
「宇佐美さん、くまさんが好きでくまさんちにいるのかと思ってた。最初の印象が強すぎて。。泣きながらすがっちゃって、女子だなあって。詳しいこと知らないけど、くまさんがまいっちゃった、女子力全開のうるうるお目目は、私もばっちり見てるからね。そもそも、どういう事情で転がり込んだわけ?親がよく許してるよね。」
「最初は、もうちょっと、そんな好きとか嫌いとかの事情やなかったんだ。。説明するのも難しいんだけど、実家にも下宿にも帰れなくなっちゃって。」
「分かんないわ。」
「今は、くまさんに家のこととか相談されると、嬉しい。向こうに何の気もないのは分かってるんだけど、ボディタッチあったり、あと、さり気に戸を開けてくれたり、女子扱いされると、すごい自分の女子の部分刺激されちゃうよね。。くまさんちは、気持ちが落ち着くというか、。」
「草食獣どうし草はみあうようなことしてたら、二人とも肉食にやられちゃうよ。」
「そういうもん??」
「そういうものです。向こうは共学なんだよ。」
うーん。。
あゆみの方がよく分かってることもあるかもしれないけど、私の方が分かってることもあるかも。
「参考に、ちょっとゆっくり考えてみる。」と、私はこの話は保留にすることにした。
大学の中の風景も、見慣れてきた。
この日は、学内の売店で、あゆみに会った。
「久しぶり、元気??」と、私は、声をかけた。
「元気元気。」彼女は、めんどくさそうに返事した。以前なら、ひるむところだけど、彼女は、親しい人にもこの調子なんだということを、私は知ってる。
私は、軽音のライブにあゆみと洋治を誘った。松野さんに言われた通りに、ノルマのことも話した。何か、フェアじゃない気がして。
「半額にしてくれるんなら行くよ。」と、あゆみは言った。
「了解。半額で良いよ。」
「宇佐美さん、向いてないんじゃないの?」
あゆみは笑った。
「分かんないや。いつまで続くかもわからないし。宮迫さんは、何かサークル入ったの??」
「私は、長刀坂部。学祭でも、形を発表することになってるけど、チケットノルマとかないよ。パンフレットの広告は、実家が毎年広告出してるし、固定のところ以外に募集はしてないみたい。うち、母親もこの大学のOBだったんだ。」
「すごいね。親子で同じ大学とか、ちゃんとした家って感じ。」
「そんなんじゃないけど。。軽音のライブって、何でこんな高いの?ゲスト出演料??」
「場所代だって。大学でやらないの。ごめん、半額大丈夫??」
「いやいや、そういう意味じゃないよ。ゲスト、お笑いの人なんだよね。楽しみにしとくよ。」と、あゆみは言った。
「肥後橋君によろしくね。くまさんは、来るって言ってたけど、忙しそうだから、予定が合えばくらいのつもりなのかも。」
「ああ、洋治は無理かもね。一応チケットは買うけど、。無理ならだれか誘うよ。やっぱり、浪人生のプレッシャーすごいみたい。。いつも、会っても口数少なくなっちゃって、覇気がないというか。。」
お父さんに、予備校の話をしたときのことを覚えている。面と向かって頼んで、最終的に断られてしまった。お父さんは、
「お母さんが納得しないよ」と話してたけど、本当は、お父さんも同じ考えなんだと思う。
確かに、浪人したからと言って、自分が変われたかと言われれば、そんな自信ない。
今は、レベル下げて進学して本当に良かったと思う。
話が長くなりそうだったので、お昼に誘ったら、あゆみは午後の授業がなくてクラブまで暇潰ししてたらしい。
うちの学食には、名物のパフェがあって、あゆみはお昼抜いてパフェ食べると言い出したので、私もそうした。
「くまさんが見たらチクチク言いそう。「口にいれるものはえらべー」とか、「食べたものからしか体は作られないんだ」とか」
あゆみは笑った。
「言いそう。小さい頃から、真面目だったもん。何か、あいつ小さい頃からアレルギーあって、親がうるさかったみたい。」
初耳だ。
「知らなかった。私が作ったものなんだも食べてたよ。」
「ああ、何か、樹液。甘味料。家でご飯とかにはあんまりいれないやつ。多分、道場の連中も知らないと思う。でも、いつも、道場で配られるお菓子口にしないから、聞いたらさ、ポロッと話したことがあって。何年の頃か忘れたけど、向こうも話したことも忘れてたかも。」
「そう言えば、食材は全部生協で注文してたわ。私も、家にあるものでしか料理してない。いつも成分表見てたよ。あれは、理系男子の習性かと思ってたわ。」
「私も、食べ物って大事だと思うんだよね。でも、甘いものに関してはくまさんとは別。女子は男子の倍は必要だよね。」あゆみは、また、笑った。
「洋治はさ、来年は、地方でもどこでも進学するって。みんな、私が洋治に地元にいてほしいプレッシャーかけてるみたいに思ってんだけど、ちょっと違うんだよね。。」
話が洋治に戻った。
「うちらさ、ずっと地元でしょ。実家じゃん。どこ行っても知り合いばっかり。だからさ、洋治が地方いくなら、遠距離やって、洋治の下宿に遊びにいくのも良いかなって。そっちで就職するなら、ついて出てもいいとも思う。洋治は好きなんだけど、家族ぐるみの付き合いが、ちょっと重いんだよね。」と、あゆみは言った。
「そういうもんなんだ。。」
実家に帰りたくても帰れない私には、わいてこない気持ちだ。
私は、いまだに未練がましく実家の周りをうろうろしている。
「それはそうと、宇佐美さん、くまさんの下宿には遊びに行った??」と、あゆみは話題を変えた。
「行ってないよ。私が向こうに行く理由ないし、くまさんもちょくちょく帰ってきてるし。」
「もしかして、、あんたら、まだ何もないの??」と、あゆみが呆れたように言った。
またまた。あせらされてしまう。
「何もないよ。こっちからくまさんに何も言えないし、向こうだって、「宇佐美のことは嫌いじゃない」とか言ってたよ。向こうが距離取ろうとしてるし、私も今の距離でいいんだよ。今は。」
声が上ずる。
「宇佐美さんさ、くまさんちに押しかけちゃった時には、もうちょっと行動に出ちゃう子かと思ってた。今更そこでひいちゃってどうすんのさ。今の家にくまさんが嫁つれて帰ってきたらどうすんの。??」
「今は、、困る。23までそれはないって言ってたけど。。押しかけちゃった時は、いろいろあって混乱して、夢中だったの。今考えたら恥ずかしすぎるわ。何か、身の程知らずが身に染みてきて。。」
「今更??じゃあさ、23過ぎて嫁が来て、今のあんたの立場って、どういう風に説明されるわけ??昔の同居人??元内縁の妻??それで、、その時はすごすご出ていくの??そりゃあまあ、くまさんだって嫁とあそこに住むかどうか分かんないけど、くまさんがよそで別の女の子と暮らし始めたら、これってどういう状況よ。」
本当に、何も返事できなかった。
「向こうは、モテるよ。何気に女子受けは良いじゃん。学歴もあるし。学生NGのOLさんでも、くまさんなら働いてるわけだし、行けちゃうでしょ。下宿の方には別の女の子がおしかけちゃったりするかもよ。」
「そうなの??」
「宇佐美さん、くまさんが好きでくまさんちにいるのかと思ってた。最初の印象が強すぎて。。泣きながらすがっちゃって、女子だなあって。詳しいこと知らないけど、くまさんがまいっちゃった、女子力全開のうるうるお目目は、私もばっちり見てるからね。そもそも、どういう事情で転がり込んだわけ?親がよく許してるよね。」
「最初は、もうちょっと、そんな好きとか嫌いとかの事情やなかったんだ。。説明するのも難しいんだけど、実家にも下宿にも帰れなくなっちゃって。」
「分かんないわ。」
「今は、くまさんに家のこととか相談されると、嬉しい。向こうに何の気もないのは分かってるんだけど、ボディタッチあったり、あと、さり気に戸を開けてくれたり、女子扱いされると、すごい自分の女子の部分刺激されちゃうよね。。くまさんちは、気持ちが落ち着くというか、。」
「草食獣どうし草はみあうようなことしてたら、二人とも肉食にやられちゃうよ。」
「そういうもん??」
「そういうものです。向こうは共学なんだよ。」
うーん。。
あゆみの方がよく分かってることもあるかもしれないけど、私の方が分かってることもあるかも。
「参考に、ちょっとゆっくり考えてみる。」と、私はこの話は保留にすることにした。