くまさんとうさぎさんの秘密
ずるい男
by 宇佐美 優那
くまさんは、玄関を上がると床に寝転がった。
「ベッドは宇佐美が使って」と、くまさんはうつ伏せのまま言った。
くたくたなんだと思う。。
元々、ひとみさんにベッド使ってもらおうという話だったし、気が引けたので、私は、とりあえず、床に直接、自分の分の布団をひいた。
ひとみさんが買ってくれた布団カバーは、シンプルだけど、レースが可愛かった。くまさんは知らないが、実は、最近は、ひとみさんに何かもらうと、リュウジさんから買い取ったものと物々交換している。だから、ひとみさんも、リュウジブランドに侵食されて行っている。
くまさんが知ったら、機嫌を損ねそうだから、黙っておこう。
くまさんの分の布団をどうするか迷って、上布団だけくまさんにかけてみた。彼が何も言わないので、私も、ひとまず自分の布団の上に寝転がった。
ちょっと沈黙があった後、、
「一緒に寝て良い?」と、くまさんが言った。
何も答えられなかった。部屋の気温が上がったような気がした。元より、同じ部屋にいて、こういうこと敢えて聞くのは、つまり、そういう事なのでしょうか?
yesにしろNoにしろ、模範解答が浮かばない。
ひとみさんがいないことを想定してなかったから、全く心つもりもない。
「手をつないでいい?」と、くまさんは言い直した。固まった空気が、少し解けた。。
「いつも、そんなこと聞かないじゃん。」
「そっか。」
くまさんは、私の手を掴んだ。それから、その後、パッと布団をまくって、私の体を抱きしめた。
「やだっ!」と、私は、小声でさけんだ。
彼が、私の首筋に頬を寄せた。体の奥が、きゅんと、悲鳴を上げた。。
「何もしないし、こうさせといて。」
何もしないんだそうだ。。ホッとする反面、期待してしまった自分がちょっと空しい。
くまさんは、私がどんな顔してるのか分かっているのだろうか。。何もしないとかいう状況ではない。
「くまさんは、、恋人じゃなくてもこういうことできる人??」と、私は、ちょっとすねた。。
「こういうことって??」
「抱きしめたり、そういう事。。」
「恋人とは限らないかな。。家族ならするかな。。じいちゃんも、ばあちゃんも、ひとみも。」
「家族??」何だろう。。この違和感、、、
「お前も、優矢君にしてるじゃん。」
「そう??」
「ハグしてるじゃん。」
そういえば、バイト先に遊びに来た優矢をハグすることがあったし、頭をなでたこともある。くまさんは、何回か優矢と私のやり取りを見ている。
赤ちゃんの時はだっこしてたんだから、その延長だ。
「俺、母子家庭だし、一人っ子だし、寂しい奴なのかもって、最近気がついた。」くまさんは、サラッと言った。
「そうなの?」
「俺さ、親父が死んでから、「お母さんを支えて」とか、「あなたがしっかりしてあげて」とか、いろんな人に言われたんだ。実際、いつも賢くやらなきゃ、うまくやらなきゃって、ずっと思ってた。宇佐美のことも、真面目な奴だし、家が大変そうだし、助けてやらなきゃ、支えてやらなきゃって。何でも、俺がしっかりすれば済むことだって思ったんだ。」
無理させてたんだろうか??
よく考えたら、彼だって、母子家庭の勤労学生なんだ。。
「それは、、本当に、いろいろごめんね。。」
自分のことで精一杯の、幼い自分が恥ずかしくなる。
くまさんは、いたずらっぽく笑った。
「宇佐美は、いろいろとやらかしてくれるから、面白い奴だなって。俺が寂しくないか、気にしてくれるのも、宇佐美くらいだしな。お前、親とはうまくいってなくても、優矢君とは時々電話してるじゃん。そん時だけはお姉ちゃんになるというか。弟とか妹とかって、こんな感じなのかなって。。」
「いろいろ、迷惑かけたことは、ごめんなさい。」
「だから、違うって。お前は、優矢君が面倒だと思ったことある??」
「あるよ。」
「そっか。」話は若干噛み合わなかった。
「せっかくピカリんの人形買ってやったのに、ミラファイターの方が良いとか言い出したりするんだよ。でも、面倒なとこも面白いというか。。あと、変なときに味方してくれる。他の人が気がついてないときに、ちょっと参ってたり、そういう事に気がついてくれる。」
くまさんは、笑った。
「俺にとっても、宇佐美は、そういう存在。」
「一緒にいてくれて、本当に感謝してる。母一人、子一人で、何とかなってるのも、宇佐美のおかげだ。俺、宇佐美がいなかったら、誰ともうまくいかなくなってたと思う。」
意外な感じがした。
「くまさんとうまくいってない人なんていないように見えるけど。。ひとみさんとも、仲良し親子じゃん。」
「いつかさ、ひとみの電話に電話したら、宇佐美が出たことあったろ。」
「久々に実家に戻ってきた後だよね。」
「あの時、俺さ、ひとみがでなくて本当に良かったと思ってる。」
大した用事じゃなかったので、自分が何を言ったのか覚えていない。??
「暑いな。シャワー使わなくて良いのか?」と、くまさんは言った。
「そう言えば、ごはん食べさせてくれるんじゃなかったっけ。」と、私は、言った。
落ち着かなきゃ。これは、妹のハグらしい。
くまさんは、サラッと言ったけど、何だか大きな違和感が消えない。
それでも、くまさんは、手をほどいてくれた。
くまさんは、玄関を上がると床に寝転がった。
「ベッドは宇佐美が使って」と、くまさんはうつ伏せのまま言った。
くたくたなんだと思う。。
元々、ひとみさんにベッド使ってもらおうという話だったし、気が引けたので、私は、とりあえず、床に直接、自分の分の布団をひいた。
ひとみさんが買ってくれた布団カバーは、シンプルだけど、レースが可愛かった。くまさんは知らないが、実は、最近は、ひとみさんに何かもらうと、リュウジさんから買い取ったものと物々交換している。だから、ひとみさんも、リュウジブランドに侵食されて行っている。
くまさんが知ったら、機嫌を損ねそうだから、黙っておこう。
くまさんの分の布団をどうするか迷って、上布団だけくまさんにかけてみた。彼が何も言わないので、私も、ひとまず自分の布団の上に寝転がった。
ちょっと沈黙があった後、、
「一緒に寝て良い?」と、くまさんが言った。
何も答えられなかった。部屋の気温が上がったような気がした。元より、同じ部屋にいて、こういうこと敢えて聞くのは、つまり、そういう事なのでしょうか?
yesにしろNoにしろ、模範解答が浮かばない。
ひとみさんがいないことを想定してなかったから、全く心つもりもない。
「手をつないでいい?」と、くまさんは言い直した。固まった空気が、少し解けた。。
「いつも、そんなこと聞かないじゃん。」
「そっか。」
くまさんは、私の手を掴んだ。それから、その後、パッと布団をまくって、私の体を抱きしめた。
「やだっ!」と、私は、小声でさけんだ。
彼が、私の首筋に頬を寄せた。体の奥が、きゅんと、悲鳴を上げた。。
「何もしないし、こうさせといて。」
何もしないんだそうだ。。ホッとする反面、期待してしまった自分がちょっと空しい。
くまさんは、私がどんな顔してるのか分かっているのだろうか。。何もしないとかいう状況ではない。
「くまさんは、、恋人じゃなくてもこういうことできる人??」と、私は、ちょっとすねた。。
「こういうことって??」
「抱きしめたり、そういう事。。」
「恋人とは限らないかな。。家族ならするかな。。じいちゃんも、ばあちゃんも、ひとみも。」
「家族??」何だろう。。この違和感、、、
「お前も、優矢君にしてるじゃん。」
「そう??」
「ハグしてるじゃん。」
そういえば、バイト先に遊びに来た優矢をハグすることがあったし、頭をなでたこともある。くまさんは、何回か優矢と私のやり取りを見ている。
赤ちゃんの時はだっこしてたんだから、その延長だ。
「俺、母子家庭だし、一人っ子だし、寂しい奴なのかもって、最近気がついた。」くまさんは、サラッと言った。
「そうなの?」
「俺さ、親父が死んでから、「お母さんを支えて」とか、「あなたがしっかりしてあげて」とか、いろんな人に言われたんだ。実際、いつも賢くやらなきゃ、うまくやらなきゃって、ずっと思ってた。宇佐美のことも、真面目な奴だし、家が大変そうだし、助けてやらなきゃ、支えてやらなきゃって。何でも、俺がしっかりすれば済むことだって思ったんだ。」
無理させてたんだろうか??
よく考えたら、彼だって、母子家庭の勤労学生なんだ。。
「それは、、本当に、いろいろごめんね。。」
自分のことで精一杯の、幼い自分が恥ずかしくなる。
くまさんは、いたずらっぽく笑った。
「宇佐美は、いろいろとやらかしてくれるから、面白い奴だなって。俺が寂しくないか、気にしてくれるのも、宇佐美くらいだしな。お前、親とはうまくいってなくても、優矢君とは時々電話してるじゃん。そん時だけはお姉ちゃんになるというか。弟とか妹とかって、こんな感じなのかなって。。」
「いろいろ、迷惑かけたことは、ごめんなさい。」
「だから、違うって。お前は、優矢君が面倒だと思ったことある??」
「あるよ。」
「そっか。」話は若干噛み合わなかった。
「せっかくピカリんの人形買ってやったのに、ミラファイターの方が良いとか言い出したりするんだよ。でも、面倒なとこも面白いというか。。あと、変なときに味方してくれる。他の人が気がついてないときに、ちょっと参ってたり、そういう事に気がついてくれる。」
くまさんは、笑った。
「俺にとっても、宇佐美は、そういう存在。」
「一緒にいてくれて、本当に感謝してる。母一人、子一人で、何とかなってるのも、宇佐美のおかげだ。俺、宇佐美がいなかったら、誰ともうまくいかなくなってたと思う。」
意外な感じがした。
「くまさんとうまくいってない人なんていないように見えるけど。。ひとみさんとも、仲良し親子じゃん。」
「いつかさ、ひとみの電話に電話したら、宇佐美が出たことあったろ。」
「久々に実家に戻ってきた後だよね。」
「あの時、俺さ、ひとみがでなくて本当に良かったと思ってる。」
大した用事じゃなかったので、自分が何を言ったのか覚えていない。??
「暑いな。シャワー使わなくて良いのか?」と、くまさんは言った。
「そう言えば、ごはん食べさせてくれるんじゃなかったっけ。」と、私は、言った。
落ち着かなきゃ。これは、妹のハグらしい。
くまさんは、サラッと言ったけど、何だか大きな違和感が消えない。
それでも、くまさんは、手をほどいてくれた。