くまさんとうさぎさんの秘密
by熊谷 義明

「優那!!」

宇佐美が振り返る。
「優那、ずっと探してた。」
優矢君だった。
「優矢、1人?」
「違うよ。お父さんと一緒。」
宇佐美のお父さんは、後からいそいそとこちらに向かって小走りに駆け寄ってくるところだった。
「お父さんは、優矢には、ついて行けないぞ。。」と、宇佐美のお父さんは言った。お父さんは、呼吸を整えるのに、しばらく時間がかかった。
「大丈夫?」と、宇佐美がお父さんの背中をさする。
すると、今度は、呼吸が整わないうちに、優矢君が、言った。
「俺、やっぱり先にトイレ行ってくる。」
宇佐美も、お父さんも、優矢君を見て、大きく目を見開いた。二人とも、同じ顔をして焦っている。
優矢君は、もう走り出していた。
「優矢、1人じゃ危ないよ。!!」
優矢君は、振り返る。
宇佐美が追いかけようとしていたが、俺はそれを制止した。
「俺が行ってくるよ。男子トイレだろ?」
宇佐美は、俺の顔を上目遣いに見上げた。それから、伏し目がちに、「お願いします。」と言った。
何だろう。何か、めちゃめちゃ色っぽいんですけど。。
宇佐美はお父さんの方にもどって、もう一度お父さんの背中に手を当てた。
「ここに戻ってくるから。」と、俺は言い残した。
「くまさん、ちゃんと前めくって、一つ一つ声かけてやって。」と、宇佐美が後ろから言った。
優矢くんは、もじもじとこちらを見ている。ちらりと俺と目があった後、伏し目がちに、俺から目をそらした。そして、地面を見たまま、言った。
「優那、余計なこと言わなくても自分でできるよ。」
恥ずかしいんだ。。
恥ずかしがってる時の目元が、宇佐美にそっくりだ。
可愛いかも。

「俺もトイレだから、一緒に行こう。」と、俺は言った。



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