まるで鏡を見ているように
この出会いは必然か偶然か
『澪、雫、これ買ってきたの』
お母さんの手にあるのは2本のヘアバンド。
シンプルなリボンの付いた、ピンクと水色の色違いだった。
『どっちがいい?』
『好きな方を選びなさい』
先に口を開いたのは私だった。
『こっち。ピンクのがいい』
『そう。雫は水色でいい?』
『…雫、ピンクが好き』
二人とも同じ方を指さす。
私は笑っていて、雫は泣きそうだった。
両親は顔を見合わせて、それから困った表情を浮かべた。
『ごめんね、一つずつしかないの』
両親の目線は、なぜか私に向いていた、気がした。
『あのね、澪、水色も好きだよ』
『じゃあ水色でいい?』
『うん』
幼心に気を遣った。両親が気の毒だったから。
両親はあからさまにホッとした顔になった。
雫は笑った。涙が少し残った、満面の笑みで。
私も笑った。まだ拙い、作り笑顔で。
『ごめんね』
お母さんは、もう一度謝った。今度は確実に私に向けて。
でも、安堵した表情は隠しもしなかった。
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