まるで鏡を見ているように
この出会いは必然か偶然か

『澪、雫、これ買ってきたの』


 お母さんの手にあるのは2本のヘアバンド。

 シンプルなリボンの付いた、ピンクと水色の色違いだった。


『どっちがいい?』
『好きな方を選びなさい』


 先に口を開いたのは私だった。


『こっち。ピンクのがいい』

『そう。雫は水色でいい?』

『…雫、ピンクが好き』


 二人とも同じ方を指さす。
 私は笑っていて、雫は泣きそうだった。

 両親は顔を見合わせて、それから困った表情を浮かべた。


『ごめんね、一つずつしかないの』


 両親の目線は、なぜか私に向いていた、気がした。


『あのね、澪、水色も好きだよ』

『じゃあ水色でいい?』

『うん』


 幼心に気を遣った。両親が気の毒だったから。

 両親はあからさまにホッとした顔になった。


 雫は笑った。涙が少し残った、満面の笑みで。

 私も笑った。まだ拙い、作り笑顔で。


『ごめんね』


 お母さんは、もう一度謝った。今度は確実に私に向けて。

 でも、安堵した表情は隠しもしなかった。

< 1 / 18 >

この作品をシェア

pagetop