まるで鏡を見ているように

―――当日。


「……はぁ」


 一つ、ため息をつく。それすらも視線を感じて落ち着かない。今までは視線になれている方だと思っていたけど、どうやら甘かったらしい。

『大丈夫、心配しないで!サポートはするから』

 言われたときは安心した姉の言葉を思い出した。
 その結果が、これだ。

 元の顔立ちを生かす完璧な薄化粧に、浮かない程度のお洒落。それらは私に恐ろしいほどに似合っているけど、それが主に男からの視線を釘付けにしちゃってる。

 美雨のサポートはこういうことだったのだ。美雨姉(みうねえ)はこれが当たり前というか、誇りなのだろうけど、私は慣れてないしそもそも注目されるのが好きじゃない。


「君、若いね、いくつ?」
「二十歳です」
「え~ほんと?」
「よく言われるんです。これでも一応大学生なんですけど、高校生に間違われたり」


 さっきからひっきりなしに話しかけられる。適当に話をでっちあげて、名前を聞かれたときにはお姉の名前を言うようにしていた。
 慣れ切った自然な作り笑顔を張り付けて会話を続ける。

 もう疲れ切っていた。美雨姉の話を受けたのは本当に間違いだった。あとから後悔の嵐。

 ふと、話しかけられた相手から目を逸らした。少しは休憩でもしてないとやってらんない。

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