転生令嬢の異世界ほっこり温泉物語
それにはお金が必要。
でも不作が続いて、買い物をするお金は無い。

「問題は農作業でしか収入を得られない事なのね」


サウラン辺境伯様の領地の様に貿易をしたり、雨が降らなくても水を確保できる水路が有ればいいけど、こんな小さな村ではどちらも実現出来ない。

二次産業を起こすにも元手が必要。

「お金をかけずに収入を得る方法を探さなくちゃ貧乏なままだわ」

ぶつぶつと呟く私に、皆が不審そうな目を向けて来る。

「お嬢様、どうなさったのですか?」

コンラードが代表して問いかけて来る。

「え? 何か良い商売はないかと思って」

「し、商売?」

「そう、農業以外で。みんなも考えて」

そう言うと、意外にもラナが反応して来た。

「髪と肌を綺麗にする水を売ったらどうですか?」

「えっ?」

ラナはうっとりした様に、肩に垂らしたままの私の髪を見つめて言う。

「これだけ艶やかになると知ったら、女性なら絶対に欲しがります。絶対に売れますよ」

「……そうね、でも」

あの温泉の効能がイマイチはっきりしない。
ライは外見に変化は無いと言っていたのだ。
それに、効き目が強すぎるのも気になるし、いきなり売るのは……そこまで考えふと閃いた。

私はソファーから立ち上がり、窓辺に駆け寄った。

窓の外には青い空に、青々とした木々。
視線を巡らせれば、茶色い大地がどこまでも広がっている。
何もない田舎の風景。

だけど、考え様によっては今からどうにでも改造出来る。土地は沢山余っている。

目まぐるしくこれからの計画を考えながら、私は皆を振り返った。皆は何事かといった表情で私の動向を見ていたようだ。


「ねえ、凄く良い事を思いついたわ。クレッグ子爵領の農業に次ぐ産業として、観光業を展開するのよ!」

「……観光業?」

ピンと来ないのか、皆首をかしげる。
私は構わず、盛り上がった気持ちのまま告げる。

「そう、ここをリゾート地にするの。メインはもちろん温泉よ」
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