短編:恋の残り香

幸せな日々

付き合いはじめた二人は、傍から見ても微笑ましくなる程幸せそうだった。

全てが初めてだった美加に合わせるように、健司はゆっくり美加のペースで恋を進めた。

恋愛の進め方が分からなくなる程、美加との恋は今までのものとは違っていた。

手を繋ぐまでに1ヶ月。

キスをするまでさらに一ヶ月。

体を重ねるたのはそれから半年後。

それまでの健司ならこんなもどかしい程ゆっくりな恋愛は出来なかっただろう。

しかしその時間さえ忘れてしまえる程に幸せな気持ちに溢れていて、一緒にいるだけで幸せだった。



高校卒業後、二人は同じ街での就職を決めた。

健司は自動車の修理工事、美加は小さな画廊。

アパートもすぐに会える距離にそれぞれ借りた。

些細な喧嘩をする事もあったが、着実に愛を深めていた。

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